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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのISHIPのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

ヨルゴス・ランティモス監督作、僕の中で2つめ。音楽を担当してるのは「哀れなるものたち」と同じ方なのだろうか(調べろよ)。音楽の使い方が非常に秀逸。映像もそうだが、音楽によって、冒頭から感じる不穏さが徐々に増していく様がより演出される。次がどうなるのかどうしても気になってしまい、長さを感じない。そのあたりは「哀れなるものたち」とも共通していて、こういうのはヨルゴス・ランティモスさんのシグネチャーなのだろうか。
あまりに不条理な状況に飲み込まれる主人公たち家族。だけれどその不条理の裏には、主人公の過失があることが分かる。いわば復讐だが、主人公たちには対処のしようがないものでの復讐。最初、この不条理的なものが、医学の発展や、金銭では解決のできないもの、現代における「確かなもの」とされていることに対する警鐘のような事かと思ったのだが…なんだかそれも違うように思えて。
こういうストーリーだと、どんどん家族の関係が崩壊していく過程が描かれそうなものだけど、そういう訳でもなかったり。どこか愛のない、そんな家族だったのだろうか。なんだか温度が足りないように思える、そんな家族の関係が常に描かれているように思えた。あの夫婦のセックスの始まり、おかしくね?そんな中で、息子は温度感のある人間に感じていたのだが…主人公は息子が血の涙を流し始めても抵抗するようなことはなく…最後のライフルルーレットに。あの映像怖すぎるだろ。しかも、ルーレットに思えてほんとにルーレットだったのか?あてにいってなかった?そんなことない?
あの青年の目的は結果なんだったのか。死んだのは1人だったけど、もうあの家族には家族としての繋がりは無くなったのだろうと思う。それが一番の結果?なんか思ったのは、主人公が犯した罪というのは、隠蔽されようとしていた飲酒して外科手術を行ったという大きな過失。こういうことで思うのは、政治的なこと。不都合な真実はもみ消されそうになる。それが漏れたとて、証拠は少なくそれが彼の立場を危ぶむことにはなりにくかったりする。日本なんてそんなことばかりで。父を殺されたマーティンがもたらした不条理な状況の映画に思えるが、本当にクソなのは今回の映画でいうと病院のずさんさやそれを隠蔽する構造の方で、それに反抗するには…という映画とも思えてくる。ただそうだと仮定して、僕らには主人公たち家族を不可思議な力で死に追いやるような方法は取れず…なんだか辛くも思えるのだが。
ひとまず、今の段階で、僕に理解出来ていることはめちゃ少ない。ただ、それでも面白いと思わせる力が非常に強いと感じた。演者の仕事もすごい。バリーコーガンさん雰囲気やばいっす。ニコール・キッドマンの冷たい感じ、凄まじい。
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