小さじ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの小さじのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

無音と不協和音が交互に襲ってくる。ねっとりじっとりとした空気が邦画っぽかった。後味もめちゃくちゃ悪くて、夕飯時だったのに食欲も無く帰路に着いた(そういう衝撃を得たくて観たんだけど)。

いきなりボカシ無しで実際の心臓手術がドアップで映るところがランティモス監督っぽい(哀れなるものたちしかまだ観てないけど)。
あらすじを読まずに観始めて「やっちゃったかも…?」と思ったけどわかりやすくてよかった。はじめは少年と不倫する医師の話かと思ったけどまあそんなわけなくて、でもそう思わされるようなマーティンへの違和感。メンヘラの寄生してくる気持ち悪さを感じていたらむしろ恨んでいるの?この家族が羨ましいんじゃなくて?旦那の手術の医療ミスをした医師に惚れる母親もおかしい。いろいろな部分で違和感があるから全てが現実じゃなくて妄想も含まれているんだろうな。

目には目を、歯には歯を。腕を食い千切るシーンが痛すぎて変な顔になった。
冒頭から子ども二人に優劣を付けるような褒め方をしたり、脚の麻痺を嘘だと決めつける父親の感情的な表現が怖い。高圧的に自分の思いのままにしようとする感じ…。学校側から聞く成績の話や父親目線での家族の見え方からして、ボブが死ぬ運命なのはなんとなく読めた。ロシアンルーレットは不快な緊張感で息が上がったし、どんな当たり方をするのかドキドキした。この監督は破壊系グロはあんまり描かないからそこは安心して観られるかも。

「子どもの為に自分の命を差し出す」を全くしない両親二人がクズだと思う反面、自分がその立場になったらこうなるかもとごく僅かな可能性が見えてしまって怖くなった。自分の過失に自覚があるならちゃんと自分で責任を取ってほしい…それもできないクズ男なのか。

娘がみちょぱに見えたのと、ニコール・キッドマンの体当たりな演技がとても良かった。
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