ジュリアン

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのジュリアンのレビュー・感想・評価

5.0
ヨルゴス・ランティモスの売りは艶笑コメディだと思っていたから途中まで手コキはないの?と戸惑い、また彼の作家性はシュールなナンセンスさに由来するスリラー感だと思っていたのであれ普通に話が進んでいるなとも驚いてしまった。

とはいえ、それでも同じ作家性の作品だと信じられたのは、ヨルゴス・ランティモス特有のアパシーな登場人物たちの存在が大きい。いつ話が一転するのか緊張感があった。

淡々とした不条理に笑うしかないという特異なユーモアは、終盤で各々が助かろうと利己的に振舞う様で頂点に達した。母は産めや増やせばのガバロジで助かろうとするし、子供もご機嫌取り全振りするという落ち。にも関わらず、まさかのロシアンルーレットで死人を決めるという矮小な父性さを備えた父。ここに美化された家族像は一切ない。
今回もめちゃくちゃ笑った