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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのぷちのレビュー・感想・評価

5.0
2回みたけど2回目も食い入るように引き込まれた
全員が感情を抑えたトーンで喋る

死の運命を目の前にしても不自然に冷静
奇妙な愛情と控えめで冷静な生き残りの駆け引き

なぜ「鹿」なのか最後までわからなかった
最後のスティーブンが打つ猟銃‥
家族はsacred(神に捧げる生贄の)鹿?
家族は捕らえられ、縛られて、意識があるのに無駄な足掻きもなく静かに座り続ける
この儀式に観念し、同意してるかのように

何度か銃弾が外れて怯えはするが悲壮さも感情も抑えられている。まるで喉元を噛みつかれて捕食者に捕れられ、諦めた動物のように?

お金や物が目的ではない
マーティンも憎しみから復讐をしている割に、淡々と感情を表さない

マーティンと会ったスティーブンの家族におかしな事が起こり始め、妻が真相を問い詰めるが

スティーブン
自分は一度も失敗したことがない
執刀医は人を殺さない
人を殺すのは麻酔医だ

麻酔医
人を殺すのは執刀医だ
執刀医はよく失敗する
あいつはお酒を2杯飲んでいた
麻酔医は人を殺したことがない

話が食い違うも

罪悪感がなければスティーブンはマーティンに高級時計など贈ったりしない
真相は明らか

マーティンは贈り物へのお礼にスティーブンにハグをする
ハグって言葉を超えて本心が相手に伝わるものだよ(見ててハラハラする)

定期的にダイナーで会っているが食事代はスティーブンに奢って貰っているわけではない

マーティンの目的はお金やものではない

スティーブンの家に招待されたお返しにマーティンは自宅へスティーブンを招待し、母に合わせる
の母も夫の事は忘れたかのような平然さでむしろスティーブンに夢中。夫殺しを知ってか知らぬかスティーブンの手にやたら惹かれて賞賛し、動物のように舐める

妻子あるスティーブンが母の慰めになればとマーティンは望む
罰したい相手と自分の母がより親密な関係になる事や不倫自体は、母の心が癒されさえすれば、やぶさかでないマーティン
自分の母さえ本当に愛しているのか疑わしい
なら父の復讐も愛からではなく
結局は自己愛から?

むしろ相手の家庭崩壊はあった方が面白いのかもしれない

マーティンを家族に合わせた途端、初対面なのに自己紹介のように自分の初潮が始まった話をする娘のキム
あり得ない奇妙さ
返事に困る様子もなく何もなかったように話を変えて2人の子供の前でタバコを吸うマーティン
幼さゆえ?マーティンに脇毛が生えたか見せろという息子ボブ
マーティンは、成長途上の思春期の子供の身体つきで筋肉質でもなく色気もない
何故か娘に「いい身体」と褒められる

執刀医の手をやたら美しいと褒めるマーティンの母と重なる

2人の子供たちの間では、いかに成熟したかが最も価値のある、憧れのような世界観
キムはだんだん年上のマーティンに夢中になる

ベッドでは奥さんが生贄の動物のように不自然にベッドから頭を落として身を投げ出す。夫のリクエストらしい

娘は知ってか知らずか母と同じようにベッドに美しい身を投げ出し、生贄の無抵抗ポーズでマーティンを誘う
マーティンは無反応で立ち去る

恐らくモテはしないだろうし、通常なら
何より女子の事で頭が一杯な時期であるが
そこがそうなら

そういう形の復讐が目的ではない
が強調される

彼女の歌を聴かせて貰ったり、待ち伏せしてバイクで送ったり、たくさん笑わせたりして「好かれる」のは復讐のひとつだろうか?
↑のバイク、マーティンの家庭の経済事情に不釣り合いな新しく立派で派手目のやつだった
おそらくコレもスティーブンから捧げられていたのであろう
不釣り合いな高価なものを無神経に与えるほど、無意識に自分の罪悪感を白状するようなもの。傷に塩を塗りつける行為
こういった事も憎しみを募らせたと思う

スティーブンの子供達に問題起こり、なかなか会ってもられなくなったマーティン
10分与えられた中で、これからスティーブン家族に起こる事とどうすれば止まるかを早口で淡々と説明
病院のカフェテリアで話すようなことではないが、自分の過失が発端だから、怒って騒ぐわけにもいかない

アナがマーティンの家に行き、どうすれば子供達を救えるか問いただす
学校へ行く前だからとマーティンはスパゲッティを食べながら10分時間を作って話すシーンも印象的
時間に制約があるなか、自分のスパゲッティの食べ方が亡父に似てるとか、母がスティーブンに慰められる事を自分も望むなど
聞きたくない話ばかりするマーティン
無駄に動く不快なフォーク使い
減らない具なしのパサパサ系トマトスパゲッティ
なのにトマトソースで濡れた赤い唇
大半食べれず皿を置いて10分たったと笑顔で終わりを告げるマーティン
どれも違和感だらけ

家族の運命を知らされ焦るスティーブン
とうとうマーティンが捕えられ拘束されて痛めつけられてしまう
暴力で家族にかけたおかしな呪いを解けと迫るが
スティーブンの腕に歯形が残るくらい噛みつく
痛めつけられても
マーティンはたとえ自分がどうなっても
予定は変わらないと
多くを語らず
今度は自分の腕を噛み切り
痛みに耐えて決意を示す

凄い追い詰め方だ

何をしても変わらないと諦め、スティーブンの妻がマーティンを逃すのだが
無断外泊行方不明で怪我だらけで帰宅したのに。よくもまぁ、マーティンの母は騒がす警察沙汰にしないものだ

社会的な処罰。そこも目的ではない

スティーブンが自分の手で自分の家族1人を殺す
もしくは
自分では手が下せず独り生き残るなら
他の3人みな失う
どちらだけ

4人家族だったスティーブンたちは、今や3人家族となって、いつもマーティンと会っていたダイナーで食事をしている
恐らくマーティンが確かめるために指示したのだろう。不相応な店に仕方なく来ている様子
マーティンが店に現れ、誰が死んだか確認するが、もう言葉も交わさず別の席へ

目的が叶った後

最後にやっとマーティンの表情が初めて正面から長めにフォーカスされる
至って静かなもので、目だけで本心を表している

ん?家族3人で食事?
スティーブンは
どうやってボブの死を処理したのだ?
闇は深い
ぷち

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