アズマロルヴァケル

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

4.2
最高で最悪のスリラー

・感想

ヨルゴス・ランティモス作品は前作の『ロブスター』引き続き2作目の観賞ですが、『ロブスター』を遥かに超えるほど爪跡を残してくれる凶悪な一作で、ヨルゴス・ランティモスの次回作『女王陛下のお気に入り』が楽しみになる映画でした。

今まで観た映画のなかでは主人公らに復讐する相手が来訪する点や家族が崩壊する点では深田晃司監督の『淵に立つ』と共通してるなぁとは感じたりしますが、それとは違う恐ろしさ。倫理的で難解なのにどこかストレートな部分もあって良かったです。

特に今作の悪役であるマーティン・ラング役のバリー・コーガンはあの鼻筋といい細い目のかたちといい見た目が不気味で、それと言って暴力的じゃないのにここまで台詞を巧みに流暢に喋るので良い意味で気味が悪いです。2018年の日本で劇場公開された映画のなかでは『アウトサイダーズ』にもバリー・コーガンが出演していたので、それも機会があれば観てみようかと。

『ロブスター』同様、シュールさがあるのに引きの画を使った独特なカット割りやストリングス等の不穏な音楽で不安がらせているのは良いし、何よりもニコール・キッドマンのヌードやラフィー・キャシディの下着姿は色気があるし、そしてそこまでグロくはないんだけど主人公の息子、ボブが終盤に流す赤い涙やマーティンが腕を噛みきろうとする様は観てて痛々しさがありました。

そして、一番ゾッとさせられたのは主人公のスティーブンが妻のアナ、娘のキム、息子のボブのうちどれを殺そうか猟銃で撃つシーンは個人的に心に爪跡を残してくれました。ラストシーンもスティーブンの家族が静かに去るところをじっと見詰めるマーティンの顔は印象的でした。

ホラー・スリラー映画としてはまさしく傑作で、はっきり言えば大人に観せたら誰も怖がりそうな映画ではありました。
良い意味で誰にもオススメしたくない映画です。