桃子

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの桃子のレビュー・感想・評価

4.4
「この世で一番コワイのは人間」

前作「ロブスター」のレビューを書いた時、フォロワーさんに「次は聖なる鹿殺しですね」というコメントをいただいた。その時はいつも見ているアマプラの見放題に入っていなかったので、鑑賞はだいぶ先になるかなと思っていたが、昨日チェックしたら見放題に入っていたので速攻で鑑賞。ほぼ2か月ぶりにランティモス監督作品を見ることが出来た。
まずは俳優さんたちの印象から。コリン・ファレルは太目なのは変わっておらず、たっぷりとしたお髭をたくわえていて、外科医という人物設定ということもあって、外見だけは堂々としている。役作りのために色々努力や工夫をしたことが伺える。スティーヴンというキャラは、一見いいヤツに見えるけれど、実は優柔不断でヘタレな男である。その駄目さ加減を非常にうまく演じていて流石だなあと思った。
久しぶりに見たニコール・キッドマン!これは私がたまたま彼女が出演している映画を長い間見ていなかったということであって、彼女は毎年のように精力的に様々な映画に出演している。世にいう「鬼才」と呼ばれる監督の作品によく出ているという印象が強い。久しぶりに見たせいか、歳をとったなあと感じたけれど、脱ぐシーンではびっくりした。さすがハリウッドの大物女優、身体の線は崩れていないし、肌も美しい。もう50歳を過ぎているのに凄い。アナという眼科医の奥さんは一見聡明だけれど、母親としてはイマイチかな。一番ぞっとした台詞は「選ぶなら○○よね。私たちならまた○○を作れるわ」。まだ見ていない人のために○○とした。こういう映画はネタバレなしでレビューを書くのはほんとに難しい(T_T)
マーティンを演じているバリー・コーガンはむろん初見だった。撮影当時は25歳だったのか!マーティンは16歳ということになっているが、全く違和感がない。一見真面目でおとなしくて正常だが、だんだんとそうではないとわかってくると、この俳優さんはただものではないなあと思った。この映画のジャンルは「サスペンスホラー」である。このジャンルの映画を見ると必ずと言っていいほど頭に浮かぶフレーズが「この世で一番コワイのは人間」なので、そのコワイ人間を久しぶりに堪能した感じだった。
ふたりの子供たちもそれぞれ可愛らしいし演技も上手い。アメリカには優秀な子役さんがごまんといるのだろう。長女キムを演じていたコは美人さんで将来有望だなー
レビューをいくつか読んだのだが、「難解」という言葉を見た。前作2つに比べたらとてもわかりやすいと思ったんだけど…(^_^;) 特に一番初めに見た「籠の中の乙女」はぶっ飛んでしまうくらい意味不明で、文字通り難解だった。ギリシャ語の響きも不思議な感じがした。「ロブスター」はトンデモ設定だったが、馴染のある俳優さんだし英語だし、前作ほど難解だとは思わなかった。この「聖なる鹿殺し」はさらに難解度が低いと感じてしまった。ストーリーがシンプルだというのも理由のひとつだろう。
予告編も見ずに予備知識ゼロで見始める時のわくわく感ときたら!今度はいったいどんな意味不明映画なのかと少し身構えて見ているとさにあらず。冒頭の説明なしのシーンがよけいに効果的に感じられるほどだ。だんだんとマーティンの異常さが露呈してくると、サスペンスとホラー指数がぐんぐん上昇していき、(そう来たか~~~!!)と感服してしまった。
監督の映画をすでに見たことがある人と、これが最初という人とでは感想が違ってくるかもしれない。私は正しい順番で見たなあと思った。監督の最新作はコスプレ映画?豪華な宮廷衣装が楽しみである。でも、鑑賞はいつになるかなあ(笑)
桃子

桃子