このレビューはネタバレを含みます
フリオ・メデム監督によるドラマ作品である本作は、スペインのマドリードを舞台に、ステージ3の乳がんと診断され右胸を切除することとなった、幼い息子を女手ひとつで育てる失業中の教師・マグダが、息子を応援するために訪れたサッカー場で出会った、交通事故で妻子を亡くしたアルトゥーロと互いに心を惹かれ合い、息子とともに3人で幸せな時間を過ごして行く中で再発した乳がんにより余命宣告されるも、アルトゥーロとの間に授かった新しい命を自身の腕で抱きしめることを希望に、残された時間を母親としてたくましく懸命に生きようとする様を描いたものとなっているのだが、本作は人を選びそうな作品と言いますか、大まかなあらすじをなぞれば心を揺さぶるものは確かにありますし、乳がんを患い余命宣告されたマグダや、患者の命を救えなかった担当医のフリアン、事故で妻子を亡くし新たな家族となったマグダすらも失おうとしているアルトゥーロ、そしてマグダの一人息子のダニのそれぞれの視点から物語を見ることによって、多くの事を考えさせらる内容ではありました。ただ、ペネロペ・クルスが演じるマグダがとにかく曲者で、自身の落ち度によってがんの再発に気づけず余命を宣告される展開や、新たな子を授かった事で生きる希望を見出していくなど、話は理解は出来るがやはり共感を得るとまでは到底思えず、遺される家族の心情を考えてしまうとあまりにもマグダが自分勝手に見えてしまいますし、アルトゥーロに関しても妻子を事故で亡くし憔悴した様子でいたのに、あっけなく悲しみから立ち直りマグダと結ばれていく様には首を傾げるばかり。その他にも腑に落ちない点が多々あり現実味はあまり感じられず、決して悪い作品ではないが、賛否両論ありそうですね。見方次第で評価が変わるかと。
