まりぃくりすてぃ

あなたのママになるためにのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

あなたのママになるために(2015年製作の映画)
1.5
呆れてものが言えない。言うけど。
出会ったばかりの大人たちが濃厚接触しまくる。闘病映画のふりした “発情映画” って感じが序盤からかなり。
文化と文化の間には(強弱関係はあっても)優劣というものはない。人文科学の常識として。だからもちろん、お辞儀とマスクの大和撫子がキスハグ文化のデカ目女を裁く筋合いはまったくない。
でも、文明は非文明の上位にある。人類とは(残念ながら)そういうものだ。ゆえに、不幸とのアツい闘いを口実に特濃接触シーンをやたら見せてくる原始人たち(手術室で医師にノーマスクで歌を唄わせる脚本家を筆頭に、張り切りすぎのプロデューサー兼任女優ペネロペもふくめて)に、意識変革をやんわり求めたくなる。こんな人たちに「コロナ! 寄るな!」とマドリードやパリで投石でもされたら私ら東洋人はたまったもんじゃない。
獣は本能オンリー。に対し、人間は、本能vs理想の葛藤を常に抱えて生きてる。悩んで悩み抜いてからの這い上がり(哲学でいう弁証法のアウフヘーベン。善と悪、とかを乗り越えた新たな高みへの大きな一歩)にこそ私たち人間の生の意味と尊厳がある。今から誰も野獣には戻れないんだから。
そういうわけで私はふだん、単純な善悪二元論(ハリウッド映画やワシントン政治にとても多い)に眉をひそめてるけれど、この仏西合作映画は何と何と何と「本能のままに生きて何が悪い!?」の一元論で最後まで行く。一元論だから善人も悪人もいなくて、ひたすらに全員がバカっぽ。
一元論者たちには言うべき言葉がないな。うん、全然ない。既にいっぱい言ったけど。

あと、乳癌である必要があんまりなかった。悪性の顔面腫瘍ってことにすればもうちょっとオモシロ。

おわり