幽斎

ジグソウ:ソウ・レガシーの幽斎のレビュー・感想・評価

ジグソウ:ソウ・レガシー(2017年製作の映画)
4.2
サスペンスの括りだった、スリラーを確立した私の生涯ベスト「SAW」。サークルで「スリラーって何?」と良く聞かれますが、Alfred Hitchcockの名作が分り易い。「SAW」は密室ミステリーと伏線がフェアなサスペンスの融合が素晴らしく、新たな起点と成ってフォロワーが続出した。生み出したJames Wanこそ、現代のHitchcockの後継者と思う。

「2」こそスリラーを維持してるが、(脚本は本来は違う作品だった)、「3」以降は殺戮運動会へと変遷を遂げる。「6」でスリラーに戻り、「7」でアノ人が出て休止する。「7」の原題は「SAW 3D」、続編は作らないと確認してファイナルと日本独自で謳ったが、この様です(笑)。日本のアスミック・エースのプロモーションも良かった。

「8」はリブートでもスピンオフでも無い「7」の正当な続編。Tobin Bell以外新顔ばかりだが、切り株やトラップが好きな方には総じて評価は低い。「同窓会じゃないか」と言う御意見も御尤も。トラップに緊迫感が無いのは、部屋が無駄に綺麗で広いから。「1」のソリッドシチュエーション・スリラーの名が泣く。ラストのシーンで友人が「寄生獣だな」と言った部分が分りませんでした(後にコミックと判明)、スリラーとして脚本に穴が有り緻密さに欠けるのは認めます。

それでも「8」は「2」に次ぐ面白さだと擁護したい。「7」でCary Elwesがビシッと決めた後を良く作ろうと思ったな。恐らく続編を撮る監督の人選で「プリデスティネーション」を観て「コイツだ!」と白羽の矢が立ったと勝手に想像してます。監督のSpierig兄弟は、難題に果敢に挑戦し原点回帰に挑みつつ、新規顧客も考えた新しい「SAW」を作ったと労いたい。

「8」は「3」以降のサディスティックな要素は薄目。ホラーは詳しくないのですが、残忍な描写にも笑いが有るのが特徴だとすれば、冗談が一切通じないシリアス路線。ここまで真摯に(笑)残酷描写に向き合う映画は無い。本作ほど利他的と利己的を考えさせられる映画も無い。シリーズを通して語られる「命の価値」と言うテーマは変わらず、完走した方も一見さんも楽しめる脚本に苦慮した点は、素直に評価したい。エレノア役のHannah Emily Andersonも良い味出してた。

「Game Over」の台詞が無い事で分る通り、「9」は同じ脚本家で制作が進行しているとBloody Disgustingが報じてた。是非Cary Elwesが再登板して、ローガン役Matt Passmoreと対決して欲しいですね。好きなシリーズなので点数は大甘です(笑)。
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