たた

島々清しゃのたたのレビュー・感想・評価

島々清しゃ(2016年製作の映画)
3.5
自分は沖縄で生まれ育ったけどヤーグマイ(家籠り。引きこもりがち)な少年だったから、沖縄に根付く音楽や伝統文化に触れてなくて全然語れないんだけど、

それでも、内地暮らしの方が長くなった今でも、三線のテン‥の一音が耳に届いただけで、心の奥の何かが呼び起こされるような、高揚感とは違うざわめきに、思い浮かぶふるさとの情景に、自分がウチナンチュであることを思い知らされます。

島に住む絶対音感の少女と、島を訪れたヴァイオリン奏者、そして島人たちの心の交流と浄化の物語。

「テストしてやる。合わせてみろ」
「やったろうじゃん‥!」
突如始まる海辺のセッションが、映画はつまんなくてもここだけは観て聞いて欲しいと思える名場面。
ヴァイオリンに和太鼓にサックス、三線、エレキギターで奏でる即興のちゃんぷるー音楽がこんなに映えるなんて、沖縄の空の下だからこそ、そして映画だからこそだよなあと思う…とても良かった。

音楽と芸能の島である沖縄は、全国でもここぐらいだろうけど、現代いまこの瞬間にも新しい民謡が続々と生まれるところ。
島々清しゃもそうだしBEGINの歌なんかもそうだし、純粋なウチナーグチじゃなくても沖縄独自の楽曲として歴史に刻まれていく。

セッションの話もそうなんだけど琉球王国から今の沖縄に至るまで、他国の支配や侵略に脅かされ戦い抗い敗れてそれでも自分を失わず、相手を受け入れ他文化を取り入れ強かに生き抜いてきた沖縄人そのものを象徴しているようで、音楽には疎い自分だけど心強く思えるのです。

エンドロールへの、さりげない入り方がとても好きだ。でも劇中で一度も披露されなかったフルコーラスの島々清しゃを、おじいの三線と歌で聞かせて欲しかったな。

ちなみに、美ら海水族館などのチュラは美という字が使われるのが一般的ですが、語源的にはキヨラ(清ら)から来ているんじゃないかという説があるらしい。美より清のほうが色んな意味が込められている気がするから好きだな
たた

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