Parry

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のParryのレビュー・感想・評価

4.0
打ちのめされて鑑賞後一週間観た時浮かんだ事を考えていた。
ろうであることが今の自分の人生の基盤である人間と音楽がほぼ唯一の生存の理由で自分のろうを障害としか捉えられないドラマー。
永遠に続く救済は誰にも与えられない。そんな事はとっくに知っていて自分で納得するまであがく男の戦い。
大人になってから今までの当たり前を失い自分が全く知らない世界に飛び込んで見つけたもの。側にいない時に響き出す他人の言葉。無条件にも永遠にも救けられなくても今手を貸す事とその手をとる事の意味。
スティーブ・マックイーンとオーディアール監督作を想起した映画。
手話を知らずにろうコミュニティで生活し始め、子供にも笑われ異国に突然放り込まれたように途方に暮れたルーベンが言語以外の方法で人と繋がる、滑り台を叩く振動でコミニュケーションをとるシーンが超よかった。NHKの手話番組の司会V6の三宅さんが耳が聴こえない人も大音量の振動は感じるから、その振動が楽しくてコンサートに来るらしいんですよと行っていたことを思い出した。

みんな言ってるけどサウンドデザインが素晴らしい。
音響の構成と映像との組み合わせのタイミングが巧み。くぐもって聴こえにくい難聴の主人公の耳、ろう者の静かな世界、健聴者に聞こえる世界を健聴者に伝える演出。
ここまで音響がストーリーテリングの大部分である映画は観たことがないかも。音響関連の賞ではオスカーノミネート確実 しなかったらアカデミー本部に抗議のポストイット貼りに行く。
直接説明しなくてもルーベンとルーの今までの人生と負ったトラウマを伝えてくる脚本と演出もマジ上手いし、ダリウス・マーダー監督、デビュー作で既に映画がうまい。

リズくんの演技、特に瞳にルーベンの思考を映す表現が滅多に見たことがないレベルで深みがあって震えた。あのラストシーンを成立させられる役者が他に何人いるだろう。聴力が低い人特有の大声の話し方も、ドラムと手話をマスターしたのもすごい。
ドレイク博士の時は体調が悪かったのか?と思うくらいキャリアベストアクトですね 今までで一番才能が活かせれていた役だと思う。ダリウス・マーダー監督ありがとう。リズ君ファンとしては万歳〜君のことが好きでよかった♪このままずっと♪ずっと♪死ぬまでハッピー♪状態
〜リズ・アーメッドファンの軽薄な感想〜
・朝起きてまだ眠る恋人にスムージー作ってコーヒー蒸らす間スクワットするていねいな暮らしメタラーリズくん最高。リズ君の胸元で眠るオリヴィア・クックの愛らしさはヒマラヤ山脈を超えた。
・ルーのブリーチ眉毛とルーベンのシルバーヘアを思いついた人は今年の文化勲章受章者に相応しい。

オリヴィア・クックも元々好きな俳優だけど今回エクストラ良かったな〜 彼女は相手役の役者も輝かせるパワーを持ってるよね。難病ものにありがちな一方的に献身するパートナーじゃなくて互いが互いの救済だったカップルの片割れの説得力よ。
出番は少ないけど支援団体の世話人ジョー役Paul Raciさんがめちゃくちゃ良かった。ルーベンとの最後の会話シーンは今年ベストパフォーマンスの1つ。
彼はコーダ(ろう者の両親を持つ聴者の子)で俳優・black sabbathのカバーもするASLロッカー。LA最高裁の手話通訳士を25年務める。
映像作品は今まで日雇いの仕事しかなかったてマジ?有名な俳優だと思った ハリウッドふし穴すぎでしょ






コメントにスケボー好きが観るラストシーンの考察+その後のルーベンについて思ったこと
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