ぶどう

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のぶどうのレビュー・感想・評価

5.0
下半期1になった。素晴らしい映画。
観た直後より、劇場を出て少ししてからじわじわと感動が押し寄せ泣けて仕方なかった。これはなんでだろうと考えてみて、本作がありきたりの感動ものではないからだと思い至った。

主人公はバンドのドラマーで、バンドメンバーは恋人でもあるボーカル。ある日難聴になり殆ど聞こえなくなる。埋め込み手術をすれば聞こえるようになると医者に言われるが非常に高額。過去にドラッグ依存者だった主人公がまた薬物依存になるのではと心配した恋人に、聴覚障害者支援のコミュニティを勧められる。当初は参加を拒んだが結局参加することにする。参加する条件には携帯電話と車の鍵を代表のジョーに預け恋人とも会わず連絡を断つという厳しいもの。

つまり主人公の男は仕事、恋人(一時的にでも)をいっぺんに手放さなければいけなくなったのだ。おそらく仕事にしているドラマーも生き甲斐に見えたので、彼の人生の全てを失ったも同然だ。
そんな彼が支援コミュニティでの生活で自分の現状を徐々に受け入れ始める。
病気からの喪失とその後の再生を描いているが、とにかくこの題材をありきたりな感動モノにさせず、心に染み渡る様な、観る側に静かに作り手の想いを訴えてくる様な作り方だった。音楽もよかった。

劇場での公開を楽しみにしていた甲斐があった。ほんとにほんとに、映画館で鑑賞できてよかった。
ぶどう

ぶどう