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サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のasaのレビュー・感想・評価

4.3
「聞こえる世界」「聞こえない世界」「聞こえるようになった世界」の違いを物理的に突きつけてくる映画だった。

見てる自分まで不安定な気持ちになっちゃいそうなくらい色々としんどかったから、2度は観ないだろうけど、でも今回この作品を観れて良かったなと強く感じた。

ルーベンとルーが泣きながら抱き合うシーンは本当に辛かったし、ここまでお互いを想いあってるならそれでいいじゃん、、って思っちゃったけど、きっとここで別れるっていう選択を取ることが、2人が過ごした時間を1番美しく留めておくことができる道だったんじゃないかと思った。想い出を美しく留めておく必要は決してないのかもしれないけど、2人の住む世界は過去と今とじゃ決定的に違う事実は変えられないから…。

人工内耳の手術を受けてからのルーベンの世界はすごく騒がしくて、「聞こえる世界」でも「聞こえない世界」でも心地よさを感じられていた音楽が、この人工内耳を通して「聞こえるようになった世界」では不快感に変わってしまっていたのが見ていて苦しかった。

ただ、最後に機械を耳から外して、再びルーベンの世界から音がなくなった瞬間、街が美しさを取り戻したような感じがしてホッとした。

どの世界もそれぞれに残酷だけど、どうにかうまく折り合いをつけて、すこしでも多くの時間を美しい世界で過ごすことができたらと祈りながらエンドロールを眺めてた。
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