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荒野にてのsyriacusのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
4.0
孤独な人を描くのが好きな監督だねえ

唯一の家族で自分のことを愛してくれる存在だったら、たとえろくでなしでも大事な1人の父親
そんな父親も亡くして、本当にひとりぼっちになったチャーリー
まだ高校生なんだからそりゃ誰かを頼りたくなるし、話し相手もほしいだろう
たとえそれが人間じゃなく馬であっても

チャーリーはピートに仲間意識が芽生えたんだと思う
お互いに走るのが好きだし、それでいて孤独だ
競走馬は人間の娯楽のために親元から離れて人間に育てられてると思う(違ったらごめん)からピートも孤独だ
そして用済みになると捨てられそうになって、それはまさに身寄りのいないチャーリーのよう
だからチャーリーは彼と同じような境遇のピートと共に旅に出ることにしたんだろう
チャーリーは友達のようにピートに一方的に話しかけていたのが見ていて辛かった
けど本人からしたらそれが1番幸せな時間だったんだと思う

大事な存在を2度も失って、チャーリー自身も人を殺めかけたことが、刑務所へ行くことの心配に繋がっているんだと思う
失うことの辛さをよくわかっているからこそ、心配してくれる存在がいる人を傷つけたことへの罪悪感が大きかったはず

人間は寄り添える存在がいてこそ生きていける
チャーリーも最終的にピートではないが寄り添える存在に再会できてよかった

父親ではなくピートにもう一度会いたいとチャーリーは泣く
ラストシーンでチャーリーが走り終わった後に見せた悲しげな表情は、やはりピートが忘れらないからだろうか
“Lean on Pete” という原題から考えてもピートの存在はチャーリーにとって別格だった

荒野の途中ですこし映った、めちゃくちゃ綺麗な星空の下に一本の木が凛々しく生えているカットが息を呑む美しさだった
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