きのこ

荒野にてのきのこのネタバレレビュー・内容・結末

荒野にて(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

オンライン試写会にて。



辛くて辛くて苦しくて苦しくて
そんな傷みがずっと続くんじゃないかって
それくらい心が不安定になる
そんな経験をしたことがある人なら、
きっとチャーリーの気持ちがわかる。

自分の居場所はどこにあるのか
何のために生きているのか
愛してくれる人は、受け入れてくれる人はいるのか
自分が守りたいものは何なのか。

大人になるにつれてわかる、
世の中は汚い大人で溢れていること。
元から汚いわけではないけれど、
生きているうちに荒んでしまうのは仕方ないこと。
素直な子どもの感性のままでは
そんな社会ではやっていけない、世の中は厳しい。
そんな世の中を、そんなこと知るかとばかりに
ギリギリの行動でひたすら進んで進んで
自分の居場所を探しに行くチャーリー。
(ランニングをしているシーンがたくさんあるのは、ひたすら進むことの象徴なのかななんて。)
大人だけど世の中生きづらいと思うこと多々あるので、チャーリーを見ているのが苦しくて苦しくて。

境遇が似ているチャーリーと、馬のピート。
ひとりと1匹の交流が、なんと心の温まることか。
そんな絆さえも一瞬で奪われてしまう、残酷なこの世の中。

“怖い夢は完全にはなくならない”
トラウマになるほどの心の傷は完全に癒えることはない。
けれど、
居場所さえあれば、見守ってくれる人がいれば
自分が信じられる人がいれば
その人や場所から、前に進む勇気と希望が見えたなら…
おばさんが言っていたように、
ゆっくりゆっくり、どんなに時間がかかっても
“楽しい日が来る”。

理由はなんであれ、チャーリーのようにトラウマがある人は少なくないと思う。
そして時間が解決するなんて嘘だと、そのときはみんな思う。
思い出すと辛いし怖いし、完全に消えることはなくて。
でも少しずつでも前を向いて生活してみようと思えるのは、楽しい毎日を送れるようになるのは
自分を愛し支えて必要としてくれる家族や友だちの存在があり、そこに居場所を見つけたから。
今はまだ怖くても、進んでみようと希望が見える。
みんなそうだと思う。

そんな心の動きを静かに描いてくれる。
じんわり染み込んでくる。

さざなみと同じく人の感情の描き方が素晴らしくて、やっぱり好きな監督だなと再認識。
きのこ

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