エミさん

荒野にてのエミさんのレビュー・感想・評価

荒野にて(2017年製作の映画)
4.0
切ない〜(ノд`)**
運命に翻弄され、16歳という年頃は、こんなにも無力で不安定なものだったのであろうか…。
自分の事は自分で決めたいのに、どうしていいのか分からない。
何でも出来るような気がするのに、何をすればいいか分からない。
何かしたいと思うのに、思うようにいかない苛立ちや悲しさ。
10代って、そんなモヤモヤドロドロしたものがいっぱいあったなぁ〜ってことを思い出した。

美しい映像。全体的に引きが多くて視野が広い。広大過ぎる荒野。政府も手に負えず、物資も乏しく、国に忘れられたような印象を受ける土地がどこまでも続いているそんな場所にも、なんとか必死に生きている大人たちの様子が垣間見える。

『にて』というと、私は悲喜こもごもなイメージを抱いてしまうのだが、この作品には楽しいって事があんまりなくて、荒野のイメージと人生の荒波のイメージが重なるように、過酷な現実が次々と怒っては主人公チャーリーをかき乱していく。
途中、チャーリーが出会うダメそうな大人達。仲間で集まってビールを呑み、ゲップをしては笑いあったりする連中。チャーリーから金を巻き上げるホームレス。「あ〜、居る居る」という様な、その日暮らしな人達。
この作品の中では社会の底辺に生きている人達だったり、人生の目的の定まらない大人の代表と言ってもいいだろう。諦めてたり事なかれだったり、風刺も込めた描写なのか、荒野で暮らす人達って、こんな感じになっていくもんなのかなぁって思った。いくらチャーリーがもがいても、ここに居たら、所詮こんな大人にしかなれないぞと言われているようで、早く荒野を抜けて都会に出て欲しいと思わずハラハラしてしまった。

決してアンハッピーな結末ではないのに、何故だか同情で胸がキリキリする。引きが多い映像が目立つ中、最後に顔がアップになる所なんて、「これからこの子にどんな試練が待ち受けているんだろう!?」って、寄れば寄るほど気が気じゃなくなる。セリフは少ないのに、伝えたいことがちゃんと伝わってくる。すごく心に響いてくる強烈な作品でした。