ひでG

安城家の舞踏會のひでGのレビュー・感想・評価

安城家の舞踏會(1947年製作の映画)
4.2
太平洋戦争中にも次々に作られた映画を観て、アメリカ社会の余力を感じたことがあるが、

戦争で多くの人命や施設を失って、まだ間がない年に、これほどのクオリティを持った名作を作り上げられる、日本映画界の底力も棄てたもんじゃない!

戦意高揚作を作れ!
隅々まで検閲するぞ!
という戦時体制下を抜け出した
戦後日本映画界は、

それまで抑えられてきた才能か一気に開花する!

黒澤明・小津安二郎・溝口健二らが開花の季節を待っていて、

GHQの指令もあり、木下恵介や今井正は、反戦・民主化の名作を今後多く世に送り出していくことになる。

そんな焼け跡から逞しく立ちあがろうとしている1947年のキネマ旬報1位になったのが
この吉村公三郎監督作なのだ!

さっき書いたように、GHQから民衆を、反戦を描け!という指令とは反して、
本作は、没落する華族一家を描いている。

大きな屋敷、豪華な内装、多くの使用人
ても、これらは全て過去の遺物となってしまう。

繁栄を極めた豪華な屋敷はもう誰かの手に渡さなくてはならない。
せめて、最後に舞踏会を開いて、散っていきたいと計画をする、その夜の物語。

ヴィスコンティを思わせる、この絢爛豪華なドラマ!

原節子、滝沢修、森雅之、昭和の映画スターの演技のチカラ

そして、拳銃、空ビン、階段、大きな窓
など大豪邸のセットの写し方、使い方の細やかさ

新藤兼人の脚本による、各人物像の確かさ

などなど、一流映画の良さを要素を全て満たしている。

同じ肖像画でも、人物の心情、場面によって違って見えてくるのも見事!

Filmarksの紹介画面が酷すぎるし、
配信されていないので、観ている人が少ないかもしれませんが、オススメ作品です!
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