しどけ梨太郎

汚れたダイヤモンドのしどけ梨太郎のレビュー・感想・評価

汚れたダイヤモンド(2016年製作の映画)
4.0
冒頭数分の映像がガンギマリで素晴らしい。

画面の色彩というか構図というか、質感がカウリスマキ作品に似ていた。そういう質感は好きなので良かった。

単なる格好良い映像でスカッとする復讐劇をする、のではなく複雑な物語を紡ごうとした意欲は評価できる。それが上手くいったかどうかはおいといて。
カットされるたびに輝き方が変わるダイヤモンドと様々な人や出来事を通じて変わっていく主人公(ニールス・シュネデール)を重ね合わせた物語構造は上手くできていた。彼が最後、自分固有の輝きを見つけられなかったのは何故なのか。ダイヤモンドのカットと同じで、人間も一度のミスで全てが台無しになってしまう存在なのか。

父親の扱いも面白い。復讐という行為を通じて無理矢理自分の中に仮想の父親を生み出そうとした結果、本当に実体の父親を得てしまう展開になる。倒すべき父親を自らの手で生み出してしまい、そこから逃げるラスト。成長物語かと思えば、ただ葛藤しただけで何も成長していない。なんか人間虚しいな。

ニールス・シュネデールの演技も素晴らしかったけど、ギャビー役のアウグスト・ディールの発作痙攣の演技が凄まじかった。あと単純に顔が好み。どんどん負け犬の顔になっていくのも良かった。