デニロ

四季の愛欲のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

四季の愛欲(1958年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

エンドマークが出てもまったく終わっていない物語。

物堅い作家といわれる安井昌二の周りにいる男女総計10名の色模様。安井昌二の妻楠侑子は人気ファッションモデルなのだが人気商売との理由で結婚はひた隠しにするのである。そしてなかなかに上昇志向が強く性的にも奔放だ。また、長妹の桂木洋子は夫宇野重吉を持ちながら満たされぬ思いがあるのかどうか、夫のいとこ小高雄二と道ならぬ恋。この男の非道さが凄まじいのだが。母親山田五十鈴もまた奔放な女で、幼い安井昌二を捨て出奔したのだが彼が名声を得てから頻繁に無心に訪れるようになる。今はモデル周旋業の永井智雄と10年来の情人関係となっている。そして安井昌二本人も妻楠侑子と別居するや、執筆で利用する那須の宿のマネジャー渡辺美佐子の足指に水虫の薬を塗りながらただならぬ関係になってしまう。

と、事はそんなに単純なことではなくあれやこれやと関係が重複して徐々にぐちゃぐちゃになっているのが分かってくるのです。

桂木洋子の濡れた瞳を観ていると、よろめくというのはこういうことを言うのかとそう思う。そのような妻が身を正して夫の寝所に赴き自分の不実を告白しようとするや、宇野重吉は今日はそれ以上は聞きたくない。今日はここでおやすみなさい、と布団に招く。翌日、桂木洋子が続きの話をしようとすると宇野重吉はこう言う。ぼくの答えはもう伝えてある。ひとりの子を成し長く一緒に暮らしている。ぼくは君を愛している、そして朝まで一緒にいて君の蜜のしたたりを味わったではないか、と。

好色振りの永井智雄もやはり若い女に目が行ってしまう。頻りに楠侑子を誘う。そして、山田五十鈴に清算を迫る。さしもの山田五十鈴も傷心の日々を過ごすのだが、知人から高級中華料理店の女中頭を命じられると水を得た魚の如く喜々として働き復活する。そんな彼女に復縁を迫る永井智雄。ここからが山田五十鈴の山田五十鈴たる面目躍如の大転回。

そんなわけでラスト。清潔な兄として信頼していた安井昌二が渡辺美佐子と西那須野駅で痴話喧嘩しているところに電車から降り立った末妹中原早苗と安井昌二に思いを寄せる友人峯品子。お兄さんなんて嫌いよ、お母さんより不潔だわ、と罵るや何処に向かうのか自分が乗っていた電車の一等車両で睦合っているのは母親山田五十鈴と永井智雄。一同唖然とするところにエンドマーク。

1958年製作公開。原作丹羽文雄。脚色長谷部慶次。監督中平康。衣装森英恵。

神保町シアター 没後10年 女優・山田五十鈴 にて
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