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アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男のバナバナのレビュー・感想・評価

4.7
1960年、イスラエルのモサドによる、アルゼンチンでのアドルフ・アイヒマン逮捕劇の達役者は、実は当時の西ドイツ検事局長フリッツ・バウアーだった、という実話。

では何故、西ドイツがアイヒマンを逮捕して自国で裁判をしなかったのかというと、当時の西ドイツでは、官僚のトップである首相府長官がナチス生き残りのハンス・グリプケ、ドイツ外務省の2/3や、1000人を超える司法官僚が元ナチ党員で占められていたので、
フリッツ・バウアーが一人で行動しないと情報が洩れてしまうからです。
そう、どこからかその洩れた情報が、追われている元SS高官に伝わってしまうと、逃げられてしまう可能性が大だったからであります。

日本でも、ガナルカナルや南方戦線の無理な作戦を立てた、大本営にいた上級将校って特に裁かれていないみたいだけど、
ドイツも「それ、俺じゃないし」とか「俺一人でやった訳じゃないし」と思っていた人がたくさん居たんですね。

そして、何故フリッツ・バウアーがたった一人でもナチ高官を追い続けたかというと、
彼は戦前ナチスに強制収容所に入れられていたドイツ社会民主党の幹部であり、ユダヤ人でもあったから!

しかし、ドイツ検事局長である人間が他国の情報部に情報を売ったとなれば、確実に国家反逆罪になってしまう。
国内の、しかも国家の中枢に残っているナチ残党は、無用な騒ぎを起こそうとするバウアーを引き摺り下ろしたくて仕方が無い。
アイヒマン逮捕には全く協力しないくせに、連邦情報局まで使って、彼がモサドに情報を売った尻尾を掴もうとしてくるのでした…。

バウアーの部下のアンガーマンさんも実在する人なのかな?
それとも、彼は真面目で地味な本作を、ちょっとでもハラハラさせる為のフィクション?
本作の、モサドにアイヒマンの情報流した件は、バウアーさんが亡くなってから10年後に表に出たそうですが、
彼の個人的な秘密もその時一緒に表に出たのかな。

日本では映画化する時、例え本当であっても、本人が既に亡くなっていても、この様な秘密は絶対に脚本には書かないと思いますが、
全部ぶっちゃけてくれているところが、さすがはヨーロッパ映画!、と思いました。
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