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The Toolbox Murders(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

The Toolbox Murders(原題)(1978年製作の映画)
3.5
4月12日公開『ハロウィン』に向けて♫

『ハロウィン』シリーズを続けて見てたら飽きてきちゃったので、グリーン監督が新作製作の際に参考にしたと語っている本作を。とはいえ監督のインタビューではタイトルだけ語っているのでトビーフーパー監督のリメイク版とどちらのことを指しているのかわかりませんが、両方見ときゃ大丈夫でしょう!

本作は、オリジナル『ハロウィン』と同年製作のスラッシャーホラー。まだスラッシャー映画の様式が定まっていない頃の作品なので、王道な展開からは外れた変化球な内容でした。スラッシャーの様式に沿った作品に慣れ親しんだ方でしたら、本作のやり口は新鮮に映るのでは無いでしょうか。

冒頭から怒涛の如く殺人シーンの連続。ストーリーを語るつもりなんて全くない潔さ。本作の殺人鬼は、タイトル通りツールボックス(工具箱)を携えてスキーマスクを被ったオッサン。本編が始まって早速、修理業者を装い侵入した家のおば様を電動ドリルで殺害。…と思ったら他の部屋に移動してハンマー→ドライバー→ネイルガンと次々にマンション住民の女性ばかりを鼻歌を歌いながら殺して行く。

そしたら中盤あたりでガラッと作風が変わって殺人はピタッとストップ。お気にな女の子を見つけた犯人さんは彼女を監禁し、気持ち悪い自分語りを延々と聞かせ続けるという監禁系のスリラーに。前半では空気だった主人公ジョーイと友人ケントが、誰が犯人なのかを独自に捜査する探偵ものへと変わっていく。

血はそこまでドバドバ出ないのですが、工具を使った殺害シーンの残酷さはかなりのもの。必ずと言っていいほど殺害の際に明るい感じのカントリーミュージックがレコードから流れており、部屋の中で行われている凶行と、聞こえてくる歌詞やムーディな曲調とのアンバランスさが惨さを際立たせている。

中でも、一撃を浴び瀕死で壁にもたれかかる女性の頭部にネイルガンを押し当て撃ち抜くという容赦の無いトドメの差し方は、殺人鬼としての無慈悲さが強調された素晴らしいシーンだったと思います。

後半の監禁スリラーはそんなに面白くはないのですが、大事な娘を失った心の傷から立ち直れずに、マタイの福音書をヤバイ方面に独自解釈した彼なりの信念に基づいた粛清の異常さと、監禁した女性を娘に見立て、幼女を扱うような接し方の気持ち悪さはインパクト大でした。
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