おそばマニア

グリーン・ゾーンのおそばマニアのネタバレレビュー・内容・結末

グリーン・ゾーン(2010年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

評価は芳しくないけど悪くない映画。イラクで大量破壊兵器を探してた実在する米軍人が主人公のモデルで、本人もアドバイザーを務めている。

ちょっと気になる点はいくつかあって、まず、ずっとステディカムだから緊張感がある代わりに画面が落ち着かなくてメリハリがない。RPGに撃墜されるヘリが闇のなかで燃えてるのは良かったけど、リドリースコットならもっとうまく墜とすかな、と思ってしまった。

ところどころ恋愛とか私生活とか、仲間の理解が得られないとかでいろいろドラマが展開できそうな箇所があるんだけど、そういうウケ狙いをすると作品全体がうそくさくなるということをよく心得てるかんじで、ことごとくスルーされる。途中でCIAに「事態はとてもややこしいんだよ」ということを言われて主人公が軍人らしく「俺にはシンプルだ」と答えるシーンが象徴的で、主人公は物事にいちいち悩んだりしない。おかしいことはおかしい、この戦争はへんだからへんなんだと。それで葛藤の描写があっさりしているから、物足りないと感じるひとも多いんだろう。お仕着せの民主主義なんていらないという立場の現地のイラク人こそが実質的な主役だったんだけど、このクライマックスに至るまでに押すなよ絶対押すなよ的なわかりやすい捻りが欲しかった。ストイックでミニマルな演出といえばそうだけど、やっぱショックを受けるための心の準備があるほうが引き立つシーンで、ここで作品ぜんたいの印象が決まってしまったかな。観客にはただ二時間事実の追認をさせられただけ、そしてドキュメンタリーともちがった疲労感が残っちゃう。いや、ぼくはそれでも嫌いじゃないし、いろんな意味でこれがよく映画になったなと感心した。