ねぎおSTOPWAR

禅と骨のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

禅と骨(2016年製作の映画)
4.0
横浜生まれのヘレン・ミトワさんの生き様ドキュメンタリー。
ドキュメンタリー映画「ヨコハマメリー」の中村高寛監督です。

プロデューサーに林海象さん、協力Pに利重剛さんの名前や、ナレーターが仲村トオルさん。再現ドラマパートにヘレン・ミトワ役でウェンツ瑛士さん、余貴美子さん・・とドキュメンタリーとしては相当豪華です(失礼!)。
『赤い靴』の話から入り、仏門に入ったヘレンさんのインタビューが第一章。
実はのっけからだいぶ興奮しました!
何がそんなに良かったかって編集です。オーソドックスなドキュメンタリーって是枝さんもかつてそうだったようにじーーっくり構えて対象者の何がしかを見逃さないようなカメラだし、表情や体の反応もしかと見せつける編集をするもんだと思っていました。アカデミー賞2017のドキュメンタリー「ICARUS」だってPOPでしたがそこまでカット数多くないと思います。

寝かせてたまるかという意図なんでしょうか、木魚や様々なリズムに合わせてポンポンと印象的な絵をつなぐこと数回。しゃべりは短く切らないので、ある意味しゃべりのミュージックビデオみたいなもの?
例えば今回寺の中で撮影していますが、仏教徒でなくとも、行われている動きの一連をキリ良く見せようとするのはごく普通の感覚だと思うのですね。そこを中村監督は人間に限らず何の知識も持たない外国人のような眼で事物を切り取っているように感じました。美的感覚とインスピレーションのみで絵を選び、それを極めて断片的に見せて印象を構築していきます。
そこにフッとアニメーションがインサートされたりするので、とにかく視覚的に楽しめます。

ドラマパートがまたしっかりしたドラマとして撮影されていて驚きました。ウェンツ氏がしばらく日本を離れてしまうそうで、寂しい限り。バラエティばかりじゃなくもっと役者やればいいのに。

そしてこの映画は後半、大爆発します。


急に我が一族の集まりを思い出させてくれました。まだお爺さんが健在だった頃の話。会って穏やかなのは少しだけ。あとはどうしてそんなに悪く取るの?って感じで喧嘩になって引っ込んで押し黙る。最後は奥さんたちだけってパターンでした。

完全な・・いえ50点もつかないかな、そんな人ばかりな人間界。思いを伝えきらないまま関係はこじれてしまうこともしばしば。誰も知らない重荷を背負い、すがってみたり突き放してしまったり・・。