明石です

屍憶 SHIOKUの明石ですのレビュー・感想・評価

屍憶 SHIOKU(2015年製作の映画)
3.9
テレビ番組のプロデューサーとして成功し、婚約者とは結婚間近、順風満帆を絵に描いたような男が、ある夜から、赤い女の出る夢にうなされるようになる。霊能者に相談すると、その女は、彼が産まれた日から取り憑いていたとのこと。ゴテゴテしたジャケット(とやや主張の激しめな効果音)とは裏腹に、謎の解明を主軸にしたミステリー仕立ての台湾製ホラー。良い。

登場人物曰く、昔の中国では、未婚の女性は先祖と同じ墓に入れなかったことから、死後49日以内に「冥婚」がおこわれていたとのこと。こういう土着の風俗を下敷きにしたホラーは素晴らしく好き。それだけでオリジナリティが出る。あと品も出る。この映画にしかない、というのはどんな映画においても(というか映画に限らず)最高の魅力だと思う。その「冥婚」のお札を拾った人が強制的に婿として迎えられ、呪いが降りかかるというのは理不尽だなあとは思うけど笑。

背後から近づいてくる何者かの足音とともにBGMの音量が急激に上がり、鑑賞者の、恐怖への期待値を無理くり上げたところで、実は、ただ奥さんが後ろから肩を叩こうとしただけだった、みたいな演出は本当にやめてほしいと思う。これが、BGMも効果音も何もなく、ただ肩を叩かれて、それが突然のことだったから登場人物が驚き、それが鑑賞者に自然と伝わる、のであればわかる。現実世界でも、何か考え事をしていて近くに人がいることに気づかない(で急に声をかけられて飛び上がるくらい驚く)のはよくあることだし。でも、音を使って意図的に恐怖を演出しておきながら、実は何でもない、みたいなのはシンプルに工夫の欠如でしかなく、作品そのものが安く見えてしまう。こういう演出が「ホラー映画らしい」とされてるとしたら、ホラーファンも随分舐められたものだなと思う。

とはいえ上記のような安易な「ホラー演出」の残念さを補って余りあるくらいには良作だと思う。夜中に目が覚めて、ベッドの下に気配を感じ、スマホで連写して写真を撮ったら、一枚ごとに女が近づいてきている、という見せ方は上手いなあと思った。本当に怖かったら、人ってそう行動するよなあと思わせる自然さも◎。終盤ですべての謎が明かされたときの物悲しさも最高、、これだけ質の高いシナリオを書けてしまうなら、過度でチープなホラー描写はカットして、ストーリー主体でいけばよかったのに、、それこそ(本作が多分意識してるはずの)シックスセンスみたいに。
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