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輝ける青春のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

輝ける青春(2003年製作の映画)
5.0
No.961[カラーティ家と巡る光と闇のイタリア現代史] 100点(ATB)

泣いた。クロニクルものはこれ以上見なくて良いくらい全てが詰まっている。

と、まぁそれだけってのも悲しいから色々書いてみることにする。
まず盛大に陰キャを煽ってくる題名だが、これは原題も似たような感じだから仕方ない。実際に私の青春が輝いていたかどうかを考えてみると"輝き"が何であるか忘れそうになるくらい淀んでいたからこれから輝かせるとしよう。それはそうと、カラーティ家の面々の"青春"が輝いていたかは微妙であるが、実際いつまでを"青春"と定義するかに依るんだろう(ここで、かもめんたるの"青春の永い一日"云々のネタを思い出す)。全体の人生が輝いていたかどうか分かるのは死ぬ間際なんだろうけど、彼らは自らの人生が輝いていたと思うのだろうか。

本作品は1966年の夏から2003年まで40年近い年月のカラーティ家を巡る年代記である。直情的で不器用な弟マッテオと理知的で正義感の強い兄ニコラが精神病患者のジョルジアに出会うところから始まり、彼女に対する社会の不当な扱いを目の当たりにした兄弟はそれぞれ警察官と精神科医になって生き方を模索していく。イタリア現代史に重ねられている部分はあるものの、家族の年代記に対するスパイス程度にしかなっていないのが良い。加えて、イタリアの美しい風景を記号としてではなく生活の一部として扱っているのも好印象。勿論彼らの生活の中に街があるのは当然だが、世界中の世界遺産を使ってインスタ映えだけ考えたアホ映画(「落下の王国」のことね)もあるから、やっぱり好き。

クロニクルものと想い出映画の境界がよく分からなくなってしまったが、本作品はあからさまにセンチに流そうとしているのが潔い。変に芸術感が鼻についたり社会の渦に巻き込まれすぎたりせず、等身大の人々がそこにいるから好きなのかもしれない。

結局、芸術を語る七面倒くさい映画なんかより本作品のような分かりやすい映画のほうが好きなんだろう。まだまだアマチュアなんだね。
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