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はらはらなのか。の8bitのレビュー・感想・評価

はらはらなのか。(2017年製作の映画)
3.9
上映終了後に酒井麻衣監督の舞台挨拶があると聞いて、早速駆けつけてきました。
監督の地元長野での上映初日ということで、ご家族や友人の方も多くアットホームな感じで盛り上がりました。
パンフレットと前作「いいにおいのする映画」のDVDにサインをいただきました。

で、映画のお話。
これはたぶん監督自身の物語なんだと思う。
夢を追い、挫折を味わい、いままで信じていた事が揺らぐ。
現実じゃないお話をみせて、嘘の世界をみせて、それが何になるのか。誰がそれを求めているのか。
葛藤し、周りの人々と触れ合い、父親とぶつかり合い、やがて自分なりの答えを導き出す。
「本当にみせたい世界があるなら、胸を張って表現してもいいんじゃないか」
ナノカの葛藤や思いが、そのまま監督の思いだったのかな。
自分のやりたい事がある。なりたいものがある。
理想と現実の狭間で、迷っている人へのエールだと感じました。

主人公ナノカが出演することになる『まっ透明なAsoべんきょ~』は、実際に原菜乃華さんが主演した舞台とのことで、
彼女が主役として舞台に立つまでを追ったメタフィクションとしても楽しめる凝った構造。
原菜乃華さんは園子温監督の『地獄でなぜ悪い』で〝全力歯ぎしりレッツゴ~♪〟って歌ってた女の子なんですが、息をのむような美少女になっていてびっくり。
監督の世界観やチャラン・ポ・ランタンの音楽がよく似合います。
というか「棒つきキャンディー」しかり、「いいにおいのする映画」しかり、この監督は女の子を綺麗に撮るのが本当にうまいです。

ファンタジーといえば、酒井監督の大きなモチーフのひとつだと思うのですが、
前作のような魔法やヴァンパイアといったあからさまなファンタジー要素はなく、今回は極力現実的な要素でもってファンタジー感を表現していました。
いくつかあるミュージカルシーンもあくまで現実と地続きな演出。なんだけどどこか非現実的でもあるというか。
現実(リアル)と嘘(フィクション)というテーマに寄り添った上でのバランスの取れた演出に監督のセンスが感じられました。
あと映像に安っぽさが無いんです。決して予算が潤沢にある映画ではないと思うんですが、映像に豊かな彩りがある。
とっても若くて可愛らしい監督さんだけど、映画は才気がびんびんに伝わって来た。
多少贔屓目もあるかもしれないけれど、これからも作品を追い続けたい監督さんです。

余談。
お客さんからの「一緒に仕事をしてみたい俳優さんは?」という質問に「杉本彩さん」と答えていたのが意外すぎて面白かったです。
とりあえず監督には「次回もmicciさん(Vampillia)を出してください」と伝えました笑。
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