ネズミツオ

新感染 ファイナル・エクスプレスのネズミツオのレビュー・感想・評価

5.0
【ネタバレしています!未見の方は鑑賞後にお読みください!!】


ダッシュ系ゾンビの頂点に君臨するスピードの限界に挑戦した血と涙のパンデミックアクション大作!韓国が誇る超特急KTX。その特急にゾンビが大発生し、ルームランナーの如く獲物を求め我先にと暴走するのだから移動手段である乗り物の概念と言うものがまるで崩壊してしまっているのが素晴らしい!

個性豊かな乗客が魅せるドラマチックなパート。子役の名演、走馬灯のように幸せな思い出を思い起こす優しさ溢れるコン・ユ演じる父の表情。地獄絵図の中にナチュラルな感動を流れゆく車窓のように映し出すなんて、もうこれを泣かずにどうしろと言うのでしょう(涙)

マ・ドンソク魅惑の極太腕がゾンビを吹き飛ばす列車内プロレス!「俺が作った」この台詞の破壊力よ!!飛び道具が一切出てこないのに知恵と力業で危機回避する韓国人のチームワーク。マックス・ブルックス原作のワールドウォーZに描かれたサヴァイヴ法を参考にしながら独自の解釈を盛り込んでホラーとパニックを融合させた近年希に見る大傑作でした。

『新幹線大爆破』からの影響が多く見受けられるのも嬉しかったです。例えば、運転席に乗り込む構図が同じだったり、列車番号が101号(新幹線は109号)。チョナン駅通過で車掌に詰め寄るくだりも名古屋通過と酷似しているし、ゾンビを閉じ込めている車両を切り離し、先頭車に待避できないか?というアイデアも新幹線大爆破と同じだった。

視覚に頼って行動するゾンビの目を欺くため、ガラスに濡らした新聞紙をペタペタ貼り付けたのには脱帽!消火器使ったのにも脱帽!身の回りの物をフル活用する人海戦術には参りました!!『アイアムアヒーロー』のゾンビに似ているのは少なからず影響を受けているんですかね?浮き出る血管、白濁した瞳、完全体になる直前、人間らしさを取り戻す所とか上手く活かしてました。独特の動きはタールマン、貞子に感化されたものか(笑)

己が助かるためには手段を選ばないエゴイズム剥き出しになるバス会社のオッサン。その卑怯な男にさえ最期のひとときに情を与えるなんてどこまでドラマチックな演出なのか…。果敢に職務を全うする勇気ある運転士も素晴らしかった!電車からディーゼル機関車へ切り替えたのも、もし電力供給がストップした際の繋ぎとして非常に練られた脚本だと思います。火だるまの機関車、操車場での大攻防戦。傾く車両の窓ガラスがミシミシと音を立ててゾンビが降ってくる絶妙なさじ加減によるスリル。密室劇なのにもっさり感を出していない走る棺桶。

流石にテーマがテーマなので鉄道会社も全面協力はしなかったようだけど、それを感じさせないリアルさが本作最大の魅力と強みなのではないでしょうか。泣けるシーンは数あれど、足の不自由な姉を慕う妹の訳ありげなシークエンスに目頭が熱くなりました。とにかくエスカレーターに身を任せたら下に何が待ち受けているか分かったもんじゃない!抜き足差し足忍び足あるのみ!変な盾とバッドも必携ですね!

【2017年9月9日(土)】
ユナイテッドシネマ アクアシティお台場の国内初3面マルチプロジェクション方式"ScreenX"で鑑賞。
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