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役所のBONのレビュー・感想・評価

役所(1966年製作の映画)
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youtubeで英語字幕があったのでかなり理解できて感謝。キェシロフスキがウッチ映画学校で制作した作品。ポーランド人民共和国の名で、ソ連によって共産主義の勢力が政府の実権を握っている時代、年金事務所での悪徳な仕事ぶりを淡々とカメラに映し、ポーランドの腐敗した官僚制度が垣間見れる。

年金申請の窓口では沢山の人々が待っているが、窓口の事務員は書類をチェックし必ずミスを見つけ審査に通らないようにしている。鼻が丸い爺さんの悲しい顔が印象的。

タバコを吸う。鉛筆を削る。スタンプを押す。指示を出す。お砂糖たっぷりのお茶を淹れる。耐熱ガラスなのか?透き通ったお茶がやけにうまそう。人の手慣れた生活がよく表れている。

ラストシーン、ファイル分けされた大量の書類の山が映し出される。「あなたもファイルの一部になるのか?」ドキッとする。

当時の情勢を日常的な風景から切り込み、素晴らしいカットつなぎで完成された1作だった。ポーランドの歴史を紐解いていくとドキュメンタリーからキャリアをスタートさせたキェシロフスキの作品は全て意味を持っていく。

この映画発表から2年後の1968年には、チェコスロバキアのプラハの春が起こり、傀儡政権だったゴウムカへの国民信頼度はガタ落ちする。

役所とそれに並ぶ人々は国家と国民の縮図だ。何の頼りもない政府だったのだ。昔からポーランドは稀有で悲運な歴史を辿っていくが、この60年代後半からはキェシロフスキの映画と共に進んでいくことができる。どれだけの国民が苦しみ怒りに満ちていたのか。
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