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五郎正宗孝子伝のandesのレビュー・感想・評価

五郎正宗孝子伝(1917年製作の映画)
3.5
非常に貴重な作品で資料的価値も高い1作。歌舞伎役者の沢村四郎五郎主演だが、意外とヒーロー的な役回りではなく、どちらかといえばポンコツっぷりも魅力である。
72分ほどあったが、まだフィルムが散逸しているようで残念。3人の弁士による上映で演じ分けなど出来は非常に良かった。琵琶や三味線などの生の劇伴も良く、サイレント映画の奥深さを知る。
話の方は前半の愛憎劇から子別れなどベタながら面白く、健気さが突き抜けた子供の存在が際立つ(そして本妻の子の駄目さも表現される)。
終盤のトリック撮影も興味深く、メリエスからの影響が日本まで伝播していることに感動してしまった。とはいえ、まだかなり舞台的で古臭いのだが、今の映画になれるとそれがかえって珍しく感じられる。
決して名作などの類ではないが、このような作品が娯楽として1910年代に大量に作られていたことは特筆すべきことである。そして、そのほとんどが消失していることはたまらなく残念である。
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