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ダゲール街の人々の河のレビュー・感想・評価

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)
4.2
アニエスヴァルダが出産で数年映画から離れていて、子育てのために家から遠出することもできないっていう状況で、逆に家からカメラのプラグが届く範囲で映画を撮るのはどうかってなって撮った映画らしい アニエスヴァルダの家の周囲50m範囲内にある小売り店とそれを営む夫婦たちのドキュメンタリー

邦訳するとダゲール的とかダゲールらしさで、ステレオタイプと合わせた言葉だから想像の枠、想定されるテンプレからはみ出さないみたいなネガティブなニュアンスがある

映画をパリとかニース、ハリウッドで、しかもゴダールとかクリスマルケルと同じようなある種インテリ側かつ活動家として映画監督をしていた人が、郊外の裏街みたいなところで数年暮らしてそこの映画を撮っているっていう背景がすごく重要な気がした

実際どうなのかはわからないけど、出会いの形含めてテンプレ的な夫婦像に落ち着いて、男女の典型的な役割と大きな変化のないけど忙しい仕事を老いるまで夫婦で営んでいくっていう、そのコミュニティに根を張って落ち着いた生活に対する、アニエスヴァルダの憧れと拒否の入り混じったような複雑な視線を捉えた映画というか、その複雑な感情についてのドキュメンタリーのように見えた

マジックショーのシーンも、映画やパリの生活をダゲール街での生活に幻視してるように見えた

追記: ダゲレオタイプはダゲールの発明した写真機の名前でもありダブルミーニングになっているらしい。初期の写真機の撮影時間の長さと、この映画を撮るために必要だっただろうダゲール街の人々と触れ合う時間を含めた撮影時間の長さを重ね合わせているようにも、その自分の家の周囲50mから先にいけないという機材的な制限をその写真機の撮影条件の制限と重ね合わせているようにも、初期の写真機が主に肖像写真に使われたことと重ね合わせられているようにも思える。
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