不在

ダゲール街の人々の不在のレビュー・感想・評価

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)
5.0
人々の営みが映画なのだとしたら、これぞまさしく映画だろう。
ここには観客を喜ばせる為の演技といったものは存在せず、ただ人間が生きているという現象だけがある。
飾らずに、剥き出しで、普遍的だからこそ美しい。
そんな平凡でありふれた私達こそがマジックであり、映画であって、眠りにつくまでその幕が降りる事はないのだ。
しかし人々はその舞台の上で、様々な仮面を付け替えて生きている。
凡庸な自分を認めたくないが故に、時にひょうきんな、時に威圧的な仮面を選ぶ。
眠っている時、夢を見ている時だけしか、本当の自分でいることができないのだ。
だからこそこの監督は映画の最後、我々に催眠をかける。
誰かを演じる必要はないと、仮面をそっと外してくれるのだった。
不在

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