茶一郎

ホワイト・バレットの茶一郎のレビュー・感想・評価

ホワイト・バレット(2016年製作の映画)
4.0
 ジョニー・トー流『白い巨塔』は、「犯人の仲間は誰だ!?」な病院の面会待ち伏せサスペンスコメディー。
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 香港の中国返還20年の節目となる今年は、実にジョニー・トー大先生の製作会社「銀河映像」設立20年の年。ジョニー・トー監督作のオープニングといえば、画面上を横切る青のイナズマのロゴ「銀河映像」がもうお決まりだが、今作はその設立20周年の記念作にして、監督作で最高のヒットを記録した作品となった。

 トー先生は常に閉鎖空間でのアクションの見せ方に拘り続けていたが、「病院での密室サスペンス」という今作のあらすじを聞いただけで、これは先生の真骨頂と分かる。実際、シンプルな三つ巴の物語に先生の成熟したモリモリ演出が遺憾なく発揮されていた。
 
 『PTU』の時も思ったが、ラム・シューのドジっ子オッサンが「可愛い」ということで許されすぎな気がする。(どうでもいい)
 特筆すべきは、「映像表現はかくして発展する」と言わんばかりのワンカット銃撃戦。
 正確に言うと、最近流行りのデジタル処理が施されたエマニュエル・ルベツキ流「ワンカット『風』の長回しだが、トー先生の画面内における男の配置、銃弾一個一個の着弾、奇妙な音楽、そして妙にスラップスティックな背景のモブの動き、全てが相まって素晴らしいコメディ・アクションシークエンスになっている。正直、これを見るだけで1800円は安いし、これからDVDでここだけを何回も見ると思う。
 『キングスマン』が3分半、『クリード』が4分半、自身の作品では『ブレイキング・ニュース』が7分、今作のこれは10分。このワンカット風長回しアクションの気持ち良さが全て時間に比例すると、今作はやはりこの種のアクション表現を更新していると言える。

 まだまだ進化をし続けるトー先生。我々、生徒はどこまでもついて行きます。
茶一郎

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