幽斎

スプリットの幽斎のレビュー・感想・評価

スプリット(2017年製作の映画)
5.0
多重人格と言えば、「アルジャーノンに花束を」で有名なDaniel Keyes著「24人のビリー・ミリガン」。1977年に逮捕された24の人格を持つレイプ犯のノンフィクション。人間の罪を学ぶ傑作、お薦めです。

監督が本当に好きなのはスリラーで無くアメコミだ。「シックス・センス」のヒットでヒーローもの「アンブレイカブル」を発表。しかし、どんでん返しを過大に期待され、スパイラルに陥る。スリラー畑の後輩「SAW」のJames Wanの様にサラッと「ワイルド・スピード」の様な大作を撮れる器用さは無い。実社会も好きな事を仕事に出来る訳じゃ無い、故にアーティストやスポーツ選手に憧れる。しかし、不器用さ込みで応援する「シャマラー」の結束は固い。その証拠に続編「ミスター・ガラス」は、全米がスーパーボウル一色の中、スリラーでは異例の全米興収3週連続1位を獲得!。

観る前にポスターを見て、ピン!と来た「アンブレイカブル」と同じだ。お手持ちのBlu-rayを並べて下さい。「ガラス」のひび割れが酷似してる。そしてラストにあの人が登場して劇場で思わずガッツポーズ!(笑)、最高の伏線だ。
純粋にスリラーとして観ると穴は大きい。監禁モノとして緊迫感は薄く、どう脱出するか?が主眼で無い為「23の多重人格者vs3人の女子高生」のプロット自体が看板倒れ。友人は「スピリット」と思い込んでた、まぁ間違いでも無い。James McAvoy、演じて楽しかったろうな。あとヒロインが野呂佳代にしか見えない(笑)。

多重人格すらミスリードとは恐れ入ったが、終盤で大事な謎解きのシーン、正に歌舞伎で見得を切るポーズの所で笑いが出る。諄いけどスリラーに笑いは要らない。それもシャマラン節とは言え、シリアスに纏めれば傑作に成ったと、そこだけが減点対象。

スリラー初のヴィラン誕生に花束を!。主人公が地下鉄の駅で線路に花を手向けるシーン、「アンブレイカブル」を穴が開くほど観た方ならもうお分かりですね?隅から隅まで伏線だらけでお腹いっぱい、御馳走様でした。アメリカでは次作を含めて「イーストレイル117号」3部作と呼ぶ。これも伏線として活かされる筈だ。

次作「ミスター・ガラス」は本作の補完が目的で延々とシリーズが続く事を監督が否定してる。3人が揃いどんな結末を迎えるのか心待ちしたい。
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