いろんな要素が奇妙なバランスで吊りあっている不思議な魅力のある映画だった。
タイトル、パッケージ、あらすじを見る限りは、かなりつまらない映画なように思える。
が、なかなかどうして、これが意外にもとても面白い。
まず導入部の引きが上手い。
ビデオのなかの自分が、自分宛てにメッセージを伝えてくる。
いったい彼(ミルトン)に何があったのか、何が起こるのか。
そして、なぜ過去の彼が未来の彼にメッセージを残せるのか。
一気に興味を惹きつけられ、そこから話は本筋に入っていく。
同じ時間を何度も繰り返すタイムループの世界。
そこから逃げ出そうともがく、というのはもはや定番の話だ。
ただ、この映画のタイムループにはいろいろと奇妙なことが多い。
例えば、前の世界で殺した相手の死体が、そのまま残っている。
生きてる人間は記憶をそのまま持ち越すが、死んだ人間は持ち越さない。
こういった要素がひとつひとつ伏線として効いてくるのがとてもいい。
登場するのは、弱々しい天才のミルトン。
気が強く性格が悪い何かを隠しているスカイラー。
ぶっ飛んでいて何をしでかすかわからないラッセル。
この三人。
ものすごく強烈なキャラクター付けをされているが、それも三人しか出てこないので上手く働いている。
誰と組んで誰を殺すのか。生きて逃げるためにどうすればいいのか。
そこら辺が入り組んで進んでいくので、目が離せない。
どこか古い映画を彷彿とさせるカット割りと演出、音楽も妙な雰囲気を生み出していていい。
また、主演のミルトンを演じるミロ・コーソンがたまらなく魅力的。
弱々しい感じの彼が決意を固めていく姿は、格好よくて痺れた。
そんなに有名な俳優さんじゃないみたいだけど、本当にとてもいい。
ドラッグ映画のような幻覚感もあるし、クライム映画のようなスリルもある。
もちろん、ミステリーでもあるし、SFでもあり、サバイバル物でも、コン・ゲームでもある。
しかも、これだけ多くの要素が入り混じっているのに、すべてが奇妙な感じでまとまっていて、どれもを邪魔していない。
計算されたというより、偶然に近い感じを受けるが、それでもこのバランスは見事だと思った。
この手の映画の場合、オチも重要な要素になるが、その点でも抜かりなし。
あっと驚くクライマックスから、再びの惨劇を想像しないではいられない不穏なラストにはもう大満足だった。
おそらく敬遠している人が多いんじゃないかと思うが、観て損のない映画だと思う。
というか、タイトル等で観ないでいるのはもったない。
おススメです。