イチロヲ

怪談お岩の亡霊のイチロヲのレビュー・感想・評価

怪談お岩の亡霊(1961年製作の映画)
4.5
自堕落な生活を送っている御家人(若山富三郎)が、旗本の令嬢との婚儀を結実させるべく、妻(藤代佳子)を死地に追いやってしまう。鶴屋南北・著「東海道四谷怪談」を映像化している、純和風の怪談映画。

伊右衛門役の若山富三郎がゴジラを凌駕するほどの災害と化しており、「こいつなら幽霊が相手でも勝利してしまうのではないか」と錯覚させられる。藤代佳子のお岩演技もまた凄まじい限りであり、闇落ちしたダークヒーロー感覚に溢れている。

亡霊の出現後は、伊右衛門の参謀(近衛十四郎)が、善人側に加担するまでの人間ドラマへと転調。散々悪いことをやらかしてからの、突然の心変わりに困惑させられるが、「幽霊よりも、生きている人間のほうが怖い」の法則を際立たせることに成功している。

終局になると、お岩の亡霊&お岩の妹(桜町弘子)の姉妹タッグを交えた、疾風怒濤のごとき異種格闘技戦が繰り広げられる。人間を人間として見ない、幽霊を幽霊として見ない、という究極のグロテスク劇場を堪能することができる。
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