めしいらず

コーラスのめしいらずのレビュー・感想・評価

コーラス(1982年製作の映画)
3.5
補聴器を外すと無音の世界になる祖父は帰宅した孫に気付かない。「おじいちゃん、扉を開けて」と外から呼びかけても気付いてもらえないでいる孫に友達も次々に加勢して、その呼び声の輪はどんどん広がりやがてコーラスのようになっていく。何て可愛らしいサスペンス劇だろうか。観客を罠にかける幾つものフェイントが心憎い。そして祖父が呼び声の音圧によってようやっと気付き顔をほころばせるラストショットにまんまと絆されてしまう。何てことのないお話だけれど、自分の都合で外部と関わるのもシャットアウトするのも選べてしまう点に、或いは難しいお国の政情への寓意があるのかもしれない。何にせよ日常を切り取る自然体な演出、窓から差し込む自然光が柔らかくてとても好もしい。傑作。
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