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関ヶ原のkuuのレビュー・感想・評価

関ヶ原(2017年製作の映画)
3.5
『関ヶ原』
映倫区分 G
製作年 2017年。上映時間 149分。
司馬遼太郎の名作小説を、岡田准一、役所広司、有村架純ら豪華キャスト共演で映画化。
原田眞人監督がメガホンをとり、石田三成の義を貫いた生き様を軸に、関ヶ原の戦いを真っ向から描き出す。
主演の岡田が不器用で人間味あふれる新たな三成像に挑み、役所が天下取りの野望に燃える家康役を演じる。さらに三成を命がけで守りながら彼に密かに恋心を抱く忍び・初芽役で、有村が本格時代劇に初挑戦した。

幼くして豊臣秀吉に才能を認められ、取りたてられた石田三成は、秀吉に忠誠を誓いながらも、正義ではなく利害で天下を治める秀吉の姿勢に疑問も抱いていた。
そんな三成の下には、猛将として名高い島左近や伊賀の忍びの初芽らが仕えるようになるが、秀吉の体調が思わしくないなか、天下取りの野望を抱く徳川家康は、言葉巧みに武将たちを自陣に引き込んでいった。
そして1598年8月、秀吉が逝去。
1600年9月15日、毛利輝元を総大将に立てた三成の西軍と、家康率いる東軍が関ヶ原で天下分け目の決戦に挑むこととなる。

今作品は二部構成で、最初のパートやと、西軍と東軍が対峙することになった経緯が語られ、豊臣秀吉の三男で庶子(正妻でない女から生まれた子)、側室であった茶々の第二子である秀頼の権利を守る石田三成と、我欲のために幕府を望む徳川家康ちゅう、個人レベルでの天敵が確立される。
数々の政治的な動き、裏切り、狡猾さを通して、避けられない内乱の危機が迫っていたため、一人でも多くの味方を確保しようとする二人の必死の努力を見ることができる。
第二部わと戦闘そのものを扱い、様々な段階を経て、最終的に戦争を決定づけた両陣営の味方の絶え間ない交代を検証している。
三成と豊臣の出会いや、忍者の存在など、歴史上正確には確立されてへん、伝承的な出来事も盛り込まれている。
さらに、初芽と白蛇という2人の女性忍者も登場し、恋愛の概念も植え付けられている。
原田眞人監督は、『GODZILLA 』などで新たに確立された、舞台や登場人物がほとんど入れ替わる高速カットを駆使して、できるだけ多くの人物や出来事を提示しようとする。
しかし、この戦術は前述の映画で成功したとは云えないかな。
登場人物の多さが、少なくとも出来事を暗記していない人にとっては、映画をやや混乱させる。
少しは歴史小説を読んできたけど、内容を観ながら整理するのは辛かった。
このことは、映画全体にも云えることで、今作品をマジに理解すっためには、その出来事について多くの知識を必要とすると思います。
一方、ユーモアの演出は、怒涛のような展開の中で、うまく息抜きができていて個人的には良かった。
主人公の三成に深みを与えていることは認めざるを得ないかな。
物語に多少の欠陥があるとしても、今作品の製作にあたっての価値については同じことは云えない。
柴主 高秀は撮影において巧みな仕事をし、政治的なシーンと戦闘シーンの両方をリアリズムと気迫で強調し、特に戦闘の舞台となる谷と森に関する美しい映像の数々で、今作品を彩ってました。また、照明演出も、特に陰影を生かした不吉な雰囲気の室内シーンにその真価を発揮してたかな。衣装やセットも然り。
今作品がいかに巨額の予算で作られたかを物語っていた。
演技については、ストーリーに登場するキャラが多いため、詳しく書くのは少し難しい。
しかし、3人のキャラは際立ってた。
三成役の岡田准一は、自分よりはるかに大きな力に立ち向かう男として説得力のある演技をしてたし、彼が苦悩するシーンは彼の演技のハイライトと云える。
家康役の役所広司は、芝居がかっていて、時に戯画的で、今作品のコメディの主役として、なかなかいい演技をしているし、敵役として最適やった安定の役所、役所広司だけに(サブっ)。
また、三成の右腕、島左近役の平岳大は、武士道の体現者として格別やったし嵌まってた。
この役者さんをピックアップして観たことなかったけど、これからは気にしていこっと。
『関ヶ原』は印象的な映画であり、原田監督にもっと時間があれば(この素材は簡単に3部作にできると思うし、連続ドラマなら時間はとれる)、人物や出来事をもっと徹底的に掘り下げ表現してたら傑作になったかもしれない。
とは云え、今作品で繰り広げられるすべてに失望する人はいないと思う。
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