司馬遼太郎氏の徳川家康と石田三成との対立を軸に、天下分け目の決戦を描いた歴史小説を、岡田准一さん、役所広司さん、有村架純さんという豪華キャストで原田眞人監督が映画化した本作は、過去にテレビドラマ等で映像化された「関ヶ原の戦い」や、そこで死闘を繰り広げた武将たちに抱いていたものとは違うイメージを与えてくれる。
特に本作の主人公である石田三成というと、「奸臣」「陰謀家」「冷血漢」という負のイメージがあるが、この作品では「義を貫く武将」という志の高い人物として描かれる。
そのような三成を象徴するのが、旗頭や陣羽織に描かれる「大一大万大吉」のスローガンだと思う。
映画でもこの言葉の意味が紹介されているが、「一人が万民の為に尽し、万民が一人の為に尽せば、皆が幸せになれる」という、英語で言うところの“One for all,all for one”になる。
この三成に対峙する徳川家康は五大老の筆頭で温厚で律儀な徳人だったのが、秀吉の死後に豹変し、天下取りを目指す野心家として老獪さを強調されて描かれている。
京都・東本願寺、姫路城等の歴史的建造物で撮影し、エキストラ総数3000人、延べ400頭に及ぶ騎馬、鉄砲隊や大砲隊までも入り乱れるという壮大なスケールで描かれる本作の中心にあるのは、この三成の理想主義による「義」と家康の現実主義、功利主義による「不義」との戦い。
この作品は戦国時代劇だが、そこで繰り広げられる社会の縮図は現代に相通ずるものがあると思う。
明晰な頭脳と高い志を持ち、理想主義に走る三成のような人は現代社会においても煙たがられるし、逆に苦労人で、人生の機微を捉えて老獪に出世していく家康のような人は経済界や政界のトップにざらにいそうな気がする。