kuro

トレーダーズのkuroのネタバレレビュー・内容・結末

トレーダーズ(2015年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

勤めていた会社が倒産。主人公のハリーは現在の収入を上回る家賃に頭を抱えていた。かつての同僚が集まると、困窮して自殺した奴、カジノで一攫千金を叶えた奴、新たな儲け話など、金にまつわる噂ばかり。そんな中、同僚の1人バーノンが主人公に、ある商売の共同経営をもちかける。内容は、金をかけた1対1の殺し合いで、バーノンはそれを"トレード"と名づけた。主人公は一旦断るものの、気が変わって参加することになり…。

バリーコーガン目当てで、アマプラにて視聴。
主人公はなぜバーノンに色々優しいのか? 少し常識に疎く、元技術屋で身体能力も高くはなく、母親に甘やかされて育ち、ワガママでこだわりが強そうなバーノン。持ちかけた"トレード"の思いつきも倫理的にアウトだ。そんな奴なのに、自分自身の行いのせいで怪我をしたバーノンをわざわざ自分の家にまで運び、怪我の手当てをして、ベッドまで貸してやる。そこまでする義理がわからない。そうかと思えば、最後は躊躇せず、バーノンを殺すし、なんなら生き埋めまでしちゃう。

バーノンも共同経営にしつこく誘ったり、主人公に懐いているように見えたが、後半裏切るので、仲間意識も少なく、たんに"トレード向き"なだけが目当てで近づいただけだったのか。バーノンの好きな幼馴染と主人公が、途中からお付き合いする仲になったが、それを恨んで裏切ったわけでもなさそう。「金が手に入れば3人で楽しく過ごせる」とか屈託もなく言ってたし(その辺バーノンは少し一般的ではない感じ)。

元軍人の植木屋も、ケンが死のうがどうなろうが構わないと話す。甥っ子か近所の子かどんな関係か知らないけど、仲良さげに笑ってたのに、そんなに人が変わるか?ってくらい、冷徹になった。

金庫の一件で主人公が運良く嫌な上司を退職させられた流れは、スピード感があってコミカルで楽しかったが、中盤から後半のほとんどにあたる"トレード"つまり殺し合いは、淡々としていて考えることがなかった。ルール無視して金だけ持って逃げようとする奴や、ルールに反した武器を使う奴とか、そんな輩にも主人公は負けない。なんか強い。確かに鍛えてはいたし、軍人のYouTube見てたりしたけど、強過ぎないか。相手のミスや、ラッキーがあるわけでもなく、なんか強かった。

最後まで見終わって、登場人物の心の動きがよく分からなかったな、と思うと同時に、この映画のタイトルはトレーダーズだし、主人公たちは資産運用の会社で働いていたし、お金に困っていた。主人公は、優しさでバーノンを助けたわけではなく、共犯で強請られたくなかったから。バーノンが主人公をトレードにしつこく誘ったのは、身体能力が高く強くて稼げそうだったから。元軍人は…金が欲しかったから? ケンを差し出したの?彼が一番ひどくない?死んで当然だわ。

金のためだけに人が動く物語、と筋が通っているところは素晴らしいな、と最後に思った。しかし、それが見ていて面白いかというと、自分はそうでもなかった。

ハイリターンによる高揚感には依存性や中毒性がある、ということなのか。舞台がアイルランド、元軍人の存在、殺し合いのできる廃墟が多い、資産運用、最後のセリフ「四ヶ月」。このあたりのキーワードに関して、知識不足で、もしかしたら背景をよく知るともっと面白いのかもしれないと思った。

元軍人の植木屋にいて、バーノンから"トレード"に誘われて、結果主人公に殺されちゃう、バリーコーガン演じるケン。ケンの登場シーン。目が輝いていてまつ毛がくるくるで年齢不詳(年齢より幼く見える演技?)で無垢なイメージのケン。他の役者とトーンが合っていない。キラキラしすぎている。殺し合いに向けて着替える初老男性に「あんたと僕の目的、ほんとに一緒?」とか、殺した相手から手に入れた高級時計をくるくる回すシーンとか、「助けて殺される!」と逃げるシーンとか、簡単に言うと全部よかった。トイレで鏡をみて、唇を拭くシーンもよかった。鏡をみて、身を少し整える仕草が世界で一番輝くのはバリーコーガンなのでは?

90分とそこまで長くないし、バリーコーガン目当てで観たという点では大満足だったので、真ん中の2.5点。
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