ニューランド

進めオリンピックのニューランドのレビュー・感想・評価

進めオリンピック(1932年製作の映画)
3.9
 映画ファンはまさにこのような作品の存在を確認するために生きているのだろう。チラシに書いてあるのは本当か知らないが、正にマルクス兄弟の為に書かれたような作で、『~カモ~』に匹敵の快作・怪作。が、W・C・フィールズやB・ターピンでもはまり役決定打とはならず、M兄弟が出演してたならば、磁力や無重力が完全に拡散し同時に無意味に引き合ったろう、その乾いた唖然呆然が息つく暇も与えなかったに違いない。それは、デクパージュやアクロバティックさが完全正確に細かいのか・気侭やりたい放題なのか双方に股がり、動機や契機があってないような中で、時空を越えた図や動きに達し、フライシャー兄弟短編群を想起させる現行版を、更に『~カモ~』と並ぶ映画史上のトップに導いたろう。
 ワイプ画面でぐんぐん進み、馬車や館、走り来る列車や客船、ロスオリンピック会場の威容・ベース力をちらつかせて、早回し走りやスロー・吊り上げ空中ジャンプをクリアに描きあげ、出会いや接近・疑似抱擁を切返しやどんでん・サイズと角度の執拗割りで異常に丁寧に、フォローや状態示しの横や縦の移動も伸びやか平明で癖なし。国政倒壊奪取が、国債デフォルト事態到来期なのか・有力閣僚との都度力比べ結果なのか同列に描かれ、国民全体が男女毎に同名で脅威身体能力持つが分かり、スパイが蔓延とされる国も・秘密もなくヤギとナッツだけの国でなにかと隠れて覗き見てるのが1人だけ、キューピットなのかやたら尻に矢を放つヒロインの弟は・列車の気紛れシスコ行きにロス戻り急行を増発してしまう、オリンピック賞金で債務返済計画が閣僚らは選手骨抜きや相互喧嘩に至らすマタハリ的女を引き入れるがその漫画的妖しさ、動機や心境の変化コロコロ当たり前にクールに・身体不全も単純な仕掛けで反転してく流れ、ら突き放しめで、観客に愛想もないが、映画の飾りのない真の力を示してくれる。でたらめ都合上の良さ繋がりが快適だ。重量挙げと砲丸投げの金が結局一種目で実現、なんてあんなヘンテコ競技あったんかいな。序盤から癖的なかつ気に入らず限りなく修正をつづける、仕草が次々に派生してく。
 貧乏国からオリンピックのロスへ、経営者と離れるブラシ売りの男が、一目惚れ・相愛の女の為に残ると、彼女は債務に苦しむ大統領の娘とわかる。恋の為一肌脱ぎ、国民の飛び抜けた身体能力に目を付けて、全種目金メダルの賞金目指し、ロスへ。大統領成代わり画策の閣僚らは特別の女を起用して、選手の骨抜き・仲間割れを画策。機転に次ぐ機転、大統領や娘も流れで種目参加して、遂に全種目制覇。
 グルーチョやチコの役は想像できるが、まだまだでたらめインチキなものになったのだろう。恋・色気ふらつきや怒りで、顧問や大統領+選手を超える役回りに、なんてレベルでなく。ハーポは長距離伝令が染み付いてる世話役の役にターピン役も兼任か。更にもっともっと逆転させ膨らませたのだろうが。観客がついてこれるか、どうでもいい、これこそが屹立した、映画そのものだ。今はもうそんな事はないが、発表当時は置いてかれた観客も多かった筈で、しかしまた観客も悪意など感じず、恨みなく好き勝手やってるなと、傍観してたろう。そんないい時代も想像できる。
ニューランド

ニューランド