義民伝兵衛と蝉時雨

一晩中の義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

一晩中(1982年製作の映画)
4.5
「一晩中」というタイトルの通り、宵の口から朝方までの一晩の、夜の人間界の普遍的な人間模様が垣間見えてくる。「ジャンヌ・ディエルマン」同様に時間が経過していく感覚が凄くリアルで卓越していて、この時間経過の感覚はアケルマン映画でしか味わうことのできない唯一無二のものだと感じた。盛場での出合い、男女関係のいざこざ、ワンナイトラブ、同性愛、家出、明け方の夜嵐、etc... 、恋人達の夜。真夜中に咲き乱れるロマンスを探し求めて躍動する人々の多様ながら普遍的な感情模様が次から次へと映し出されていく。そして無情なことにも朝日はまた昇り、ミッドナイトの魔法は溶け、日中の喧騒が容赦なく押し寄せてくる。16mmの質感、構図、展開、音、リズム、etc... 、唯一無二の映像体験に圧倒された。劇場でもう一度観るべき傑作。