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ドリームのtorakoaのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
3.0
実話ベース。邦題が何か違う気がするし、ざっくりすぎないか?
1961年。人種差別も男尊女卑も当り前の時代、NASAで働き頭脳で貢献し認められていく黒人女性三人の話。こんな縁の下の力持ち的存在がいたんですよって話でもある。

能力のみならず先見の明と発想で信頼を得ていく様は爽快感があるし、彼女達の芯の強さを描こうとしてたところは好感。
映画に限らずストーリーのあるメディア全般において強い女性を登場させるのがお約束化しているが、その大半が腕っぷしの強さか口で主張し相手を言い負かそうとする気の強さなことにウンザリしてきていたので、不満をグッと飲み込んで認めさせるべく次の手を考えるしなやかな強さは心地よかった。
愚痴るより行動したらどうかとか言う彼女が、自分が既に行動し向上しようとしてることを引き合いに出さないとこもいい。こういう“強さ”はスタンダード化してほしい。

計算係チームのリーダー的な彼女が後半でキルスティン・ダンスト相手にちょっと言葉にしてしまうとこはやや残念ではあったけど、一言だけで済ませてさらっとしてたのはよかった。
キルスティン・ダンストは出番多くないしさほどいい役でもないが、初めていい役者かもと思った。妙に美女扱いされる役柄ばかり観てたせいでピンとこなかっただけかもなー。

差別があることを認識してはいたはずだが、自分に直接関係ないゆえに思いっきり失念し末端のことに気づけずにもいた上司の悪気のなさも興味深い表現だったと思う。

北風と太陽の寓話で言ったら主人公達は太陽のほうで、エンジニア志望の彼女の夫は北風のほうで対比を見せてもいる。
というより、彼女達は現状をより良くしたいとか貢献し認められたいとかは思っていても、世の中を変えてやろうとまでは思ってなくて、無駄な衝突を避け地道な努力をし続ける現実的なところがよかった。
何かを大きく変えるためには硬軟両方必要なのかもしれないとも思った。軟ばかりでは舐められるだろうし硬ばかりでは遺恨が根強くなるだろうし。

いい話なんだけど見せ方や演出のセンスがどことなくB級感で作品としては何だかイマイチだと思う。音楽も割と今どきな軽い音であんまり効果的な感じはなかった。話の素材は興味深いのにどこかチープな印象になってるのが残念。

個々のエピソードがうまく溶け込んでないようにも思った。主人公の有能さを見せるために主任のポールだったかが意地悪無能な敵役みたいになってたのもどうかと思ったし、取ってつけたようなロマンスとかも、うーん。
有色人種用トイレの表示外してこれでよしみたいなのも、女子トイレである表示は必要だろうから何も破壊せんでもとか、細けえこたあいんだよ、わかりゃいんだよみたいな感じが80年代あたりのアメリカ映画らしいというか古いテンプレ的な印象で勿体ないなー。

吹替入、英語字幕入。レンタルBDに映像特典あり。御歳97とかいうキャサリンG.ジョンソンさん御本人のインタもちょこっとある。おおおお。
監督と主演の人のコメンタリーも入っている。
実際は検算に3日かかっていて、IBMでも3時間かかるものだった等脚色はあるが、台詞等は概ね記録通りで、「あの女性が正しいと言うなら飛ぶ」と言ったのは事実だそうな。
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