グラッデン

ドリームのグラッデンのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.2
鑑賞前に抱いたイメージを良い意味で裏切ってくれた作品でした。

宇宙開発競争の背景にある東西冷戦構造、人種分離の生活環境と公民権運動の足音といった、当時の米国社会の「日常」を通して社会的なメッセージ性を感じつつも、最後まで明るく楽しい作風を貫いていたのは非常に良かったです。

また、周囲の理解者の協力を得て自らの道を切り開く三者三様の個人の物語を描きながら、マーキュリー計画という壮大なミッションに挑んだNASAの人々たちを描いた群像劇としても成立させるバランスのとれた構成も良かったです。
後者の立場から考えると、当初の邦題を取り外すことができて良かったかなと思いました。

権利を考える機会は半世紀以上経過した現在も非常に多いと思います。本作を通じて感じたことは、狭い視点で見てしまうと的外れなもの、画一的なものにしかならないこと、そして、それが本来の役割を果たさないということです。
前提となる土台は整えたうえで、様々な立場にある人たちにとってより良い環境を整えていく柔軟性が必要なのではないかと。

隠された英雄譚から見えたものは、夢ではなく、今日的にも考えていく現実に対する課題なのかもしれません。