Hiroki

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択のHirokiのレビュー・感想・評価

4.1
早いもので2022年のカンヌも終幕。
受賞作品含めて今年のカンヌについて思う事noteの方に書いたのでちょっと興味のある方は下記から!


https://note.com/marry_e_n_t/n/n57c1141e1a35


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個人的には今年はコンペ監督予習があまりできなかった事が悔やまれる。
という事でラスト⑥は現代アメリカの最重要作家ケリー・ライカートで締めたいと思います。

ケリー・ライカートもなかなか日本では観る環境の難しい監督ですね。
昨年渋谷のイメージ・フォーラムで特集上映していたり、最近U-NEXTで初期作品の配信が始まったりしてますが。
彼女の特徴としては一貫して女性目線から映画を撮っている事。
あとは動物と自然。
ここら辺がキーワードのクリエイターです。

今作はメイリー・メロイ原作3つの短編を集めたオムニバス作品で、それぞれローラ・ダーン、ミシェル・ウィリアムズ、クリステン・ステュワートというスターを迎えているが、メインテーマはやはり“女性の生きづらさ”。
しかしそこらへんにある女性視点の映画と違いライカートが描くのは、女性による男性性の解体。よくわからないと思う人もいるとおもいますが、つまりは女性が男性的であるとされるもの、男らしさと言われるようなものをぶっ壊す。

1つ目のエピソードで弁護士のローラ(ローラ・ダーン)は男の方が信用を得やすい業界で格闘しながらもマチズモ的な依頼人フラー(ジャレッド・ハリス)の心を溶かしていく。
2つ目の主人公ジーナ(ミシェル・ウィリアムズ)も夫ライアン(ジェームズ・レグロス)の無神経な振る舞いやマチズモ的なアルバート(ルネ・オーバルジョワ)の言動に苛立ちながらも目的を達成していく。
3つ目はそのままで昔(西部開拓時代)は男の仕事とされていた牧場で働くジェイミー(リリー・グラッドストーン)と女性がするべきだと言われている仕事しかしていない家族から抜け出し弁護士として奮闘するベス(クリステン・ステュワート)。
そのどれもが男社会を打ち破ろうとする女性の物語。
そしてそれは女性を男性の性の対象として描かないという事でもある。
ロマンティシズムの排除。
ボーイ・ミーツ・ガールの排除。
女性を商品として描かない。
この徹底した姿勢こそがライカート作品の気高さの一因であると私は思っています。

さらに今作の注目点はキャスト。
キャストがほぼ全員軒並み素晴らしい。
ローラ・ダーンとジャレッド・ハリス。
ミシェル・ウィリアムズとルネ・オーバルジョア。
クリステン・ステュワート。
みんな文句のつけようがないほど完璧。
その中でもリリー・グラッドストーンが特に素晴らしい。
セリフはあまり多くないんだけど、あの笑顔と瞳。そして身体から発せられるオーラ。
存在感が凄すぎる。
彼女は先住民族の血を引いていると言う事でそこらへんもあの役へのマッチとして関連しているのか。
まーこのキャストの静かーな演技合戦だけでも観る価値ありです!

ケリー・ライカートのコンペ作品『Showing Up』はA24プロデュースで彼女のミューズであるミシェル・ウィリアムズが彫刻家を演じる。
もーこの情報だけでも観たい!
noteに書いてある通り批評家の評価もめちゃくちゃ高いです。
ライカート作品は最近劇場公開されていないと思うので、ぜひとも劇場公開される事を願うばかり!

という事で今年もカンヌコンペ予習終了です。
ご覧頂いた皆様ありがとうございました!
また来年。

2022-48
Hiroki

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