近本光司

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択の近本光司のレビュー・感想・評価

4.5
どれも絶妙な按配の秀作だが、とくに三つめの掌編がたまらない。モンタナ州の鄙びた土地でちいさな牧場を営むジェイミーを演じたリリー・グラッドストーンという俳優の純朴なまなざしにくらりと来る。そこにほっそりとして都会的なモダンさを醸しだすクリステン・ステュワートを当てているのもすばらしい。二人の造型に説得力があるから、はじめて二人が会った夜のダイナーも、何度めかの出会いで果たされた乗馬も、あの子のために夜どおし車を走らせ、そして翌朝には涙を堪えながらただただハンドルを握って帰路に就くラストも、本当に沁み入る。ローラ・ダーンのはみ出したセーター。サモア15番目の王位継承者の警備員。ミシェル・ウィリアムズが土に埋める煙草の吸い殻。なにより、あのモンタナ州のだだっぴろい土地。そこにぽつんと生えているダイナーには孤独な老人たちが夜な夜な空腹を満たしにやってくる。どういうわけかわたしはこの映画を観てアメリカに強烈にあこがれをおぼえた。