天之忍穂耳

エクスタシーの涙 恥淫の天之忍穂耳のレビュー・感想・評価

エクスタシーの涙 恥淫(1995年製作の映画)
3.9
1シーン1分1カット×60シーンの60分の作品で、自分たちを宇宙人だと思っている家族の話。ということは知っていた。
映画が始まると、各シーンの頭で「No.1」「scene No.2」と掛け声まで入っていたので、残りのシーン数を逆算しながら観れた。
ところが、「S#50」を最後に、それ以降はシーンNo.の掛け声はなくなり、同時にBGMもなくなった。
クライマックスに向けてストーリーに集中させるためにそういう仕組みにしたのかと思ったが、上映後のトークで本当の理由を知ることができた。

音楽はジョン・ゾーンという著名なミュージシャンにタダでつくってもらったらしいく、1分×60シーンの映画だから1分の曲を60曲頼んだら、即興でつくった50曲が送られてきたと。
そして、もらった音源をそのまま順番通り使ってシーン終わりでブツっと曲も終わらせるというコンセプトにしたのだという。
シーンの頭に入っていた「ナンバーワン」という掛け声はジョン・ゾーンの音源に入っていた合図の声だったのでる。
50曲しかなかったため、シーン51以降は掛け声もBGMも無くなったという訳だった。
しかも、ジョン・ゾーンの他に参加していたミュージシャンには、マーク・リボーがいたらしい。
音楽に詳しくないのでどれほど有名なミュージシャンなのか知らないが、たまの知久寿焼が『ライブ・イン・ニューヨーク』のMCで尊敬するギタリストとして挙げていたので、覚えていた。
調べたらエルビス・コステロのバックバンドとかやってる人だった。

ちなみに、この映画の元ネタは三島由紀夫のSF小説『美しい星』(2016年に吉田大八監督で映画化されている)とのこと。


無茶苦茶な映画ではあったものの、大木裕之監督の中では分かりやすい部類の作品だった。
正直、映画自体は面白くなかったけど、コンセプチュアルな仕組みを知ると面白く感じた。
三島の小説も読んでみたくなったし、吉田監督の映画も見てみたくなった。
サブスクでジョン・ゾーンとマーク・リボーの曲を聴いてみた。
マーク・リボーは完全に知久寿焼だった。めちゃくちゃ影響を受けているのがわかった。