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私は兵器のブタブタのレビュー・感想・評価

私は兵器(2016年製作の映画)
4.2

【あらすじ】
ピアノ調律師の丸瀬望都(まるせ・もと)は、謎の男・岸アズマと出会い、アズマが作った「誰かに復讐したい人間」と「復讐を代行することで暴力欲求を満たしたい人間」がウェブ上で出会い、復讐を代行する『代弁者たち』というサイトを紹介され、代弁者として復讐を代行することで自らの暴力欲求を満たしていく。
そして雑誌記者の梶清一郎は『代弁者たち』の実態を調べていた。
ある日、望都と親交がある藤井伊津佳、藤井釈親子が復讐代行のターゲットとなってしまうことで事態は混乱していく。(サイトより)

2016年の邦画界は『君の名は。』『シン・ゴジラ』の大ヒットに加え『ヒメアノ~ル』『ディストラクション・ベイビーズ』の超暴力映画、更には『アイアム・ア・ヒーロー』と言う世界に出しても遜色ない素晴らしいゾンビ映画が漸く現れましたし、中でも不条理な暴力や殺人を描いた作品『怒り』『葛城事件』等々...
近年稀に見る邦画大豊作の年だったと思います。

『私は兵器』は助成金制度で制作された作品で、その暴力描写と描いているテーマ、完成度はヒメアノ~ル、ディストラクション~に匹敵すると思いますが公開規模が一般では無く映画祭等限られているのが残念です。

主人公のピアノ調律師・望都(辻伊吹)は小学校での仕事で出会った学校に馴染めない少年・釈(橘賢将)にピアノを教えることに。
殺人の前科を持つ父(菅田俊)のことを赦せない望都だったが、復讐代行組織「代弁者たち」と出会い、もう一つの顔を持つことになるのだった・・・。

「復讐したい相手がいる人間」と「誰でもいいから暴力を振るいたい人間」と言う双方の利害が一致した人間同士をネットを使って結びつけ、代理殺人ならぬ代理復讐を行う言うなれば秘密結社を作り上げた男・岸アズマ(玉井英棋)の出現により望都の平穏な日々は終わりを告げ不条理な暴力が支配する世界へと導かれていく。

そこには何のカタルシスもなく、復讐が行われても誰かが救われる訳ではなく残るのは暴力によって引き起こされた悲劇だけ。
しかしやられっ放しで終わらせて良いのか?との問いと「復讐」と言う行為を「代理」で行うシステム化する事により、そこに本来ある筈の「恨み」や「怨念」が純粋な暴力と言う渇いたモノに取って代わられ、感情が消えてあんまり使いたくない表現ですがゲームやヴァーチャル世界化してゆく。
岸カズマの昏いカリスマ性が目を背けたくなる暴力に一種の崇高さや苦行(間接的にも人に暴力を振るうと言う苦痛)にも思えて来て不思議な爽快さを鑑賞後は感じました。

見てる人が少ないのでネタバレしないで書くのは大変なのでこの辺で。
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