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私はシベリヤの捕虜だったのmhのレビュー・感想・評価

私はシベリヤの捕虜だった(1952年製作の映画)
5.0
これも視聴難易度高め。
どっから話せばいいのかわからないほど話題盛りだくさんの捕虜収容所もの。
数少ないシベリア抑留を扱った邦画で、さらっと触れるに留まった「人間の條件」とは違い、その状況、体験談をがっちり描いている。
ソ連(作中では「ソ同盟」と呼んでる)による洗脳が完了した同志たち(民主化同盟)が捕虜収容所を運営している様子が強烈。
占領下日本は反動政府であり我々はこれを打倒せねばならないというお題目を並べている。「人間の條件」の主人公も捕虜収容所の運営側に回っていたかもしれないなど想像しながら見た。
同志たちがいくら熱弁しようと、シーンとしてるモブたちが良かった。
この映画を取り巻くトリビアもすごい。
・アメリカ情報局が資金提供して作られた反共プロパガンダ映画。
・そんな映画が東宝争議(1946-1948)の傷もまだ癒えないであろう東宝で作られている。(東宝争議を扇動したのは共産党員だろうことは容易に想像つく)
・現存するフィルムが長い間見つからなかった。
・60年ぶりにワシントン米国立公文書館で発見。
・発見されたのはタイ公開版。(東宝マークなし)
1949に中華人民共和国が成立しており、その勢力拡大にあわてたアメリカ(当時は「レッドパージ」「マッカーシズム」の真っ最中)がタイで公開させたのかもしれないなぁなどの妄想も楽しい。
「ダモイ」(ロシア語で「故郷へ」)「スタハーノフ運動」「カラカンダ」などの初見なセリフを喜んでググった。
「ノルマ」はたしかシベリア抑留から流行したロシアの言葉なはずなんだけど、この映画ではそのあたりスルーしてバンバン使っていた。
ストーリーは別にどうってことない普通の捕虜収容所もの。いやでもラストはすごかったなぁ。阿諛追従野郎の処理が鮮やかだった。
遠くの港に日本の船が停泊しているときの解放感ったらなかった。
極悪なことするわけじゃなく、的外れなことを考えてるという共産党員たちのキャラ造形も良かった。
つまんないはずなんだけど、めちゃ楽しんでんな。
えもいわれぬ魅力的に満ちた映画でした。
mh

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