現れる小林

アシュラの現れる小林のレビュー・感想・評価

アシュラ(2016年製作の映画)
5.0
個人的に韓国映画最高傑作。血が飛び散るノワールものなのだが、脚本面でも映像面でも、「あーはいはい、よくあるそういう感じのシーンね」というようなありきたりな場面が誇張抜きで1コマもない(強いて言えば後輩との格闘シーンぐらいか?でも迫力あって良いシーンなのでOK)。

それでいて「ね?奇抜でしょ?」といったような鼻につく感じでもなく、「なんで今までこういう面白い展開や演出を誰も思いつかなかったんだろう」と思わせるような絶妙な灯台下暗し的空間を開拓しているようなイメージ(もちろん今までの国内外の名作にインスパイアされている部分はあるのだろうが、その組み合わせ方やエッセンスの抽出が上手すぎる)。

コップのとことかもいいけど、最後市長が「アイゴーアイゴー」って言いながら膝立ちで歩くシーンがなんか一番鳥肌立った。

やはり狂ったおじさん達の全力のぶつかり合いを見るなら韓国映画しかない。特にアンナム市長パクソンべのキャラクターが本当に素晴らしい。
パクソンべを演じたファンジョンミンは、マドンソクみたいに見るからに悪人顔というわけではなくて、普通にみるとただの人当たりのいいおじさんみたいな感じだからそれが尚更怖さを引き立てる。
ライムスター宇多丸が言っていた「本当に人を人と思っていないからこそ滲み出る無邪気さを含んだ、純度100%の悪」みたいな表現がかなりしっくりきたのでここに記録しておく。
ただ冷たい熱帯魚のでんでん ほどの「そんな人いないだろ感」はなく、サイコパス的資質を最大限活かしてこんな風に狡猾にのし上がってるような人って意外と現実にもいるんだろうな、とも少し思ってしまうようなリアリティがある。

とにかく最高傑作なので見てほしい。
ただ言うまでもないが血や暴力が無理な人は見ないほうがいいだろう。