イチロヲ

ベッド・インのイチロヲのレビュー・感想・評価

ベッド・イン(1986年製作の映画)
3.0
妻子ある中年男(伊藤裕平)と愛人関係を築いている女性(柳美希)が、束縛と結婚を拒絶しつつ、その場しのぎの快楽を貪っていく。愛人関係に依存している女性の日常を描いている、日活ロマンポルノ。やまだ紫・著「ゆらりうす色」を原作に取っている。

「ヒューマニズムから逸脱した人生を送っていること」「男にとって都合の良い女を演じていること」など、日常の不安要素を重度に抱えている主人公が、自問自答と自己省察を繰り返していく。いわゆる「敗北の美学」の系譜。

主人公がポエトリー・リーディング調の台詞回しをするところが若干ながら気持ち悪いが、文字テロップやイラストを主人公の心情に合わせて合成させるという、(当時としては)斬新な演出が用いられており、それなりに楽しむことができる。

「結婚しない生き方もアリ」という考え方が浸透し始めた時分の作品。「束縛を嫌う」と「結婚を嫌う」は別個であることを示唆させているが、この複雑怪奇な人間心理を最深部まで掘り下げるのは、さすがに難しかった様子。
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